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2023年11月20日
No.10003943

不動産投資の概念を変えたい

不動産投資の概念を変えたい

INTERVIEW
株式会社 Agnostri 
青木 龍 代表取締役


いま不動産業界で注目されている企業がある。東京のオフィスビルに特化して仲介事業を行うAgnostri(アグノストリ)。起業から4年で年間取引金額100億円を上げるまでに成長した。バブル期を知らない青木龍社長(34)が目指すのは、顧客の会社を守るための不動産投資だ。


柔和な笑みを浮かべながら落ち着いた口調で話す姿に、急成長中の不動産会社社長というイメージはない。それでいて紡ぎ出される言葉には説得力がある。自らのビジョンを実現したい。そんな想いが相対する人をひきつける。

東京生まれで東京育ち。高校卒業後は役者を目指した夢追い人。22歳の時、周囲の友人たちが就職していく中で、「このままではいけない」と役者の道を断念。「とにかくお金を稼ぎたい」と思って不動産営業会社に就職した。

就職した会社は、オフィスビルをワンフロアごとに分割して販売するビジネスモデルの会社だった。成長期にあったその会社で、50億円を売り上げてトップセールスも記録した。一方で、営業するたびに違和感を覚えるようになっていった。

「その会社である程度稼げるようになり、結果を出すことで社内のポジションも上がっていたので、本来辞める理由はなかったんです。ただ、ぼくはクライアントに対してより良い投資機会を与えたいと思っていましたが、その意見が通らなかったので辞めることにしました」

27歳で突然の退職。そのとき起業という選択肢はなかった。だが数カ月経つと貯金も減っていく。気が付くと納税ができなくなりそうになった。

「これはまずいと思いました。でも、そこから会社を探して働いても給料が振り込まれるまでに2カ月はかかる。そこで、物件情報を調べてクライアントに提案。その案件が成約して無事に納税ができました(笑)」

その後は個人事業主として不動産の仲介業を始めた。前職では会社が買い取ったビルを売って利益を上げるビジネスだったが、やりたかったのは物件をしっかりスクリーニングして適正価格でクライアントに提供するサービス。

「不動産業者専用で物件情報を提供しているネット媒体があるんですが、基本的にそこに良い物件は載りません。そこで、都内の不動産会社を1軒1軒回って、中古ビルの物件情報を片っ端から聞いて歩きました。そうして取引を成約させていくうちに、ビルの売買に強いことを認知していただいた業者さんから、物件が出るたびに情報が入るような形ができていきました」

本業を継続している経営者さんのお役に立ちたい

2018年に株式会社を設立。社名のAgnostriは、アグノスティック(依存しない、とらわれない)×トライ(挑戦)×I(人)の造語だ。過去にとらわれず、クライアントに新しい収益基盤の構築を提案し続けることをミッションとした。

今年2月、さっぽろ雪祭りの会場にAgnostriがブースを出展した。キャッチコピーは「東京にビルを持とう」。地方の企業経営者に東京でオフィスビルを持つことを訴える目的だった。

東京都心にある中・小規模のオフィスビルはバブル期に建設された物件が多い。Agnostriが顧客に勧めるのは主にこうしたビル。オーナーにテナント料収入が安定して入る中古物件だ。

「信用調査会社のデータによると、100年以上続いている長寿企業の中で、一番多い業種が貸事務所業なんです。この事実から、ビルを持って企業に貸す事業がいかに安定しているかがわかります。一方で、バブル崩壊やリーマンショックのときに潰れた業種でもっとも多かったのが、不動産売買業でした。不動産売買業と不動産賃貸業は似て非なるものなのです」

Agnostriはここ数年で、地方のホール経営企業数社とも取引が始まったという。

「パチンコ業界は市場が縮小しているうえにコロナ禍もあり、多角経営で不動産賃貸業をという方もいらっしゃいました。一方で、バブル期を経験している創業者がいる場合、先代が築き上げたバランスシートを自分の一存で投資に使っていいのかと悩んでいる方もいらっしゃいました。でも、投資ではなく、『保険』という言い方をした瞬間に受け入れていただけるんです」

土地は値上がりするという神話の上で、銀行が高利で融資していたバブル期といまとは状況がまったく異なる。

「日本語で投資は資産を投げると書きますよね。でも英語ではインベストメント。その語源は身を守るとか、上着を羽織るという意味なんです。例えばいま手元に1億円のキャッシュがあり、この1億円をそのまま10年間持ち続けるのと、ビルを1億円で買って賃料収入を得ながら10年間持ち続けるのでは、10年後にどちらが増えているでしょうか。間違いなく不動産で持っていた方が増えるわけです。物価が上がっていれば1億円で買った物件を買値以上で売却できるかもしれない。これこそ守りの経営になるとぼくは思っています」

青木社長が前の職場を離れた決定的な理由がここにある。高値で不動産を売るのではなく、顧客と伴走しながら不動産投資をより良い方向に導く。同社の顧客にリピーターが多いことが、このビジネスモデルが支持されていることを証明している。

「バブル期以降脱却できない不動産投資の概念を変えて、資産価値が高く収益の変動が少ない東京都心の物件に特化して、物件が持つ価値を当社では提案しています。生意気に聞こえるかもしれませんが、いままで続けてこられた本業を長く守っていきたい、従業員さんを守っていきたい、そんな想いを持って本業を継続している経営者さんのお役に立ちたいのです。さまざまな事業に挑戦している経営者さんが多いと思いますが、その選択肢のひとつとして、ぜひビル業界に目を向けていただきたいです」


あおき・りゅう
1989年生まれ東京都出身。22歳で事業系不動産に特化した不動産売買の会社に就職。中小企業の経営者をターゲットに、ビル売買の営業開拓を実施。その後大阪支店・名古屋支店の立ち上げに携わる。2018年に株式会社Agnostriを設立し、現在に至る。著書に『2%の人しか知らない、3億円儲かるビル投資術』(ぱる出版)。

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文=野崎太祐(アミューズメントジャパン)
※『月刊アミューズメントジャパン』2023年12月号に掲載した記事を転載しました


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