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パチンコ店特化型広告代理店のCEOが語る 「実戦! パチンコ店のWebマーケティング」㉟
集客を実現するパチンコ店の『ファンマーケティング』とは?
文=梶川弘徳 シー・エフ・ワイ代表取締役

ファンマーケティングとは、企業が提供する商品やサービス、ブランドに愛着を持ったファンを増やし、中長期的に売上を拡大させるマーケティング手法です。
ファンマーケティングでは顧客との関係性を強化し、ファンがどのようなことに価値を感じているのかを理解して、ファンに喜んでもらう商品やサービスを提供します。また、ファンに多くの接触機会を設けてコミュニケーションを取ることで、売上を最大化させます。
近年、経営戦略としてファンマーケティングを採用し、業績アップを目指す企業が増えてきました。自社のファンを増やすという意味では、パチンコ店においても有効なマーケティング手法であると考えられます。今月号ではパチンコ店におけるファンマーケティングの活用について考えてみたいと思います。
私たちの身近で、ファンマーケティングを経営戦略に取り入れている企業の代表格は「スターバックスコーヒー」です。スターバックスコーヒー(以下、スターバックス)は、売上・店舗数ともに世界No.1のコーヒーショップチェーンですが、テレビCMや広告チラシにはほとんど費用をかけていないことで有名です。
なぜ、ほとんど広告を活用しないのに世界No.1企業になれたのか? その答えこそが「ファンマーケティング」による成果であると言えるでしょう。スターバックスは「第4回ソーシャル活用売上ランキング」で1位を獲得しています。
ソーシャル活用売上ランキングとは、日経BP社が発行するデジタルマーケティングの専門誌「日経デジタルマーケティング」が実施する調査で、企業やブランドがソーシャルメディアをいかに売上に結びつけているかをランキング化したものです。前年が9位だったことから飛躍的に向上したことが分かります。
テレビCMや広告チラシをあまり利用しないスターバックスにとって、ソーシャルメディア(SNS)を有効に活用できるかどうかは売上に大きく関わるため、非常に力を入れている分野でもあります。
スターバックスは、公式XやFacebookでコミュニティーグループを作り、ファン同士の交流が活発に行われるようにSNSを運用しています。私も実際にグループに参加して投稿を見ていますが、ファンが新商品を満足げに紹介する投稿や初めて訪れた店舗を嬉しそうに案内をする投稿が多く、それに対して「私も買いたい!」や「週末行ってきます!」など、影響が広がるようなコメントが多く見受けられます。
また、投稿の内容には接客に対するポジティブな意見も多く「◯◯をしてもらって感動しました!」という内容が非常に多いのも印象的です。スターバックスのSNSは、決して運営者側が一方的に情報発信しているのではなく、ファン同士がコミュニケーションを楽しんで成り立っているというのが、他の公式SNSにあまり見られない特徴ではないかと思います。
スターバックスの著書を読んでみると「私たちはサードプレイスになる」というフレーズをよく目にします。これは、コーヒーを売るのではなく、居心地の良い場所を提供するという、スターバックスのミッションとして掲げられている考え方です。そして、それを実現するために最も大切にしているのが「接客」だと書かれています。
接客や商品で感動を与え、情緒的な価値を提供することでファンを作り、公式SNSやアプリはそのファン同士の交流のために運用している。このようにあくまで、支えてくれるファンがいてこそSNSやアプリの存在が生きてくるというのがスターバックスのファンマーケティングの考え方になります。
パチンコ業界に目を向けると、ファンマーケティングを実施していることで私が個人的に数年前から注目している大井ニュー東京(東京都品川区)があります。同店は、店長のダウニー澤氏による新台解説のライブ配信を主としたファンマーケティングを行っています。
ライブ配信には多くの視聴者が集まり、動画視聴やチャットを楽しんでいます。視聴者の多くはダウニー澤氏のファンであり、時に遠方から同氏に会いにファンが来店することもあるそうです。同氏の誕生日には数百人のファンが集まり、祝福するというから驚きです。
不定期に開催するオフ会にも多くのファンが集まり、ファン同士が交流を楽しんでいるそうです。なぜここまでファンが集まるのか? インタビューをしてみたところ「日頃からお客様との交流を大切にしており、枠に捉われない接客やサービスを心がけていることが伝わっているのかもしれません」との回答。同氏は、どんなに忙しくてもお客様との会話を大切にし、困りごとには全力で対応しているそうで、感謝の手紙が届くことも珍しくないと言います。
前述のスターバックスと大井ニュー東京には、枠に捉われない接客とお客様を思う考え方、そしてファンの交流を目的としたSNS運用というマーケティング手法においての共通点があります。店舗から一方通行の情報発信をするのではなく、お客様を思う行動とともにSNS運用をすることでファンが増えていく。これこそがファンマーケティングにおいて重要なポイントであり、ファンマーケティングによって集客が実現している理由なのかもしれません。
機能的価値での差別化が難しくなってきている昨今、情緒的価値の提供が競合他社との差別化要因になってきており、マーケティングの世界ではファンマーケティングがそれを実現するための手法の一つであると考えられています。新たな集客方法としてファンマーケティングを経営戦略に取り入れることを検討してみてはいかがでしょうか。
文=アミューズメントジャパン編集部



