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2023年05月11日
No.10003480

電気料金高騰にどう立ち向かう?
使用電力量を減らすために、電気料金を下げるためにできること

使用電力量を減らすために、電気料金を下げるためにできること

発電のための石炭や液化天然ガスの輸入価格高騰の影響で、2021年後半から燃料費調整額が引き上げられた。これに続き昨年は、契約更新月からは基本料金が大幅に値上げされ、電気代は2倍近くになった。この事態が収拾する目途はたっていないまま夏を迎えようとしている。

節約できる余地はきっとある!

これまで節電に取り組んできたホール業界が、さらに節電するにはどんな方法が残っているのだろうか? 結論から言えば、多くのホールは使用電力量を減らす余地がまだあるはずだ。

ホール業界は、業界を挙げて二酸化炭素排出量削減(すなわち電気使用量削減)に取り組んできた。全日遊連は、東日本大震災が起こる前から業界の電気使用量調査を行ってきた。2021年度分の「ホールにおける電気使用量等調査」は組合員ホールの91.2%にあたる6755店から回答を得ており、基準年である2007年度比で電気使用量が大幅に減っていることがわかる。パチンコホール1平方メートルあたりの年間CO2排出量は268.9㎏‐CO2/㎡で、2007年度比で34.2%減。遊技機1台あたりの年間CO2排出量は758.4㎏‐CO2/台で、2007年度比で26.5%減。

業界の中でベンチマークとされるような大手法人、地域有力チェーンは過去10年の間に店舗照明をLED化し、空調効率の高い設備に交換を終えている。しかし、この全日遊連が行った調査におけるホールの施策に関する回答からは、やや意外な状況が見えてくる。結果の要点は図の通りだ。これが、多くのホールはまだ使用電力量を減らす余地があるはず、という根拠だ。


本記事では昨年、新たな使用電力量削減.電気料金削減に取り組み始めたホールの事例を紹介するが、その前に、図中のすべてを実施済みのホールでもまだ使用電力量を15%近く削減できる余地はあるかもしれない、という方法をいくつか紹介する。

まず、知っておくべきなのは、エアコンの効率を高めることが非常に重要ということ。

そのために第一に点検すべきは、エアコンフィルターのクリーニングがなされているか。エアコン内部に汚れがたまって目詰まりを起こしていると、空気や熱の変換が上手にできないため、通常よりも多くの電気を消費しながら空気や熱の変換を行っていることになる。

次に、エアコン室外機の負荷を減らすこと。室外機じたいが日差しによって熱を持っていれば、排熱の妨げになり熱交換器に負荷がかかる。当然、電気が無駄に使われる。日除けの設置や遮熱断熱コーティングが有効だ。コーティングは、室外機だけでなく、設置場所周辺にも施工することで、反射熱を抑えられる。

三つめはガラスへの遮熱断熱コーティングだ。パチンコホールに限らず自動車ディーラー、大型SCなどの建築の壁材にガラス壁が多用されているが、ガラスの遮熱断熱機能は低い。ガラス壁近くの休憩コーナーや島は、夏には暑く冬は寒く、エアコンを強めにしているはずだ。たいていの施設は、竣工時に遮熱断熱フィルムを貼っているが、その耐用年数は6年~7年なのですでに劣化しているかもしれない。現在はフィルムよりも高い性能を持つガラス用の遮熱断熱コート剤がある。昨年、いくつかの中堅ホール法人が実施し、使用電力量低減の数値が実績として得られている。

ある施工業者によると、性能の良いコーティングであれば、平均すると約15%の使用電力量削減効果があるという。施工費は約3年で償却できる計算で、10年の保証がある製品なら、フィルムより圧倒的にコスト優位と言える。

次に紹介する施策も含め、まだ実施していないものがあるなら、いますぐ検討を進めて夏に間に合わせるべきではないだろうか。

デマンドコントローラー


「ALEA」などのブランドでホールを経営する北陸エンタープライズ(福井県)の店舗照明はすでにLED化されており、デマンド監視装置も導入しピーク電力が上がらないよう注意しながら営業していた。

電気料金の高騰を受けさらなる節電のため、昨年7月に『ALEA WORLD舞屋店』(福井市)にデマンドコントローラーを導入したところ、使用電力量は前年同月比で約10%減らすことができた。その成果を確認して12月には『ALEA WORLD春江店』(坂井市)にもデマンドコントローラーを導入した。

デマンドコントローラーでフロア内の空調出力を調整している

店内の温度は均質ではないため、店内から快適さが失われないよう、どの系統の出力をどの程度まで下げて大丈夫なのかを把握しながら、それぞれの系統の出力パーセンテージを調整している。

節電意識を啓発

「玉三郎」「ミッドガーデン」「スロットZAP」のブランドでホールを展開するエム・アイ・ディ ジャパン(新潟県)は昨年7月から節電コンサルタントからレクチャーを受け、従業員の節電意識を高めることで使用電力量の低減に取り組んでいる。従来は開店準備の時間帯に最大需要電力のピークがあったため、遊技機電源は30分の間隔を空けながら入れる、島還元機の電源を入れるのは開店の直前、のように見直したほか、店内各所に温度計とサーキュレーターを設置。その成果は9月頃には数字に表れた。『MID GARDEN 堀之内店』(新潟市)を例にすると、2022年2月に26.7万kwhだった使用電力量は今年2月には18.1万kwh。実に32.2%も減っている。

『MID GARDEN堀之内店』の島上に設置したサーキュレーターは約10台。コンサルタントから受けたレクチャーをもとに、どの場所にどういう向きで設置すれば空調効率を上げられるかを各店舗が模索した

節電担当者を選任

延田エンタープライズ(大阪府)は15年前から節電に取り組んでおり、電気料金削減サービス業者から「もうこれ以上削減できません」と言われていたが、昨年7月、全店舗が主に現場(ホール)に常時いる従業員の中から「エネルギーマネージャー」を選任し、ゼロベースで運営を見直した。

店舗では早番と遅番それぞれの電気使用量を記録し、一日の目標数値内に収めるよう、担当者が先頭に立って店舗の舵取り役を担う。これにより、昨年7月以降は大幅な電気使用量の削減に成功した。

同社は、「店舗の状況を理解している従業員に担当させることで、現場ならではのアイデアが湧く。それが削減につながっている」と言う。

※各店舗の取り組みの詳細は月刊アミューズメントジャパン5月号に掲載しました。


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