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2023年05月12日
No.10003483

電気料金高騰にどう立ち向かう? 節電事例① ダイナム
ダイナムが全社で取り組む節電対策
各部署が協力し電気使用量削減へ

電気料金の高騰が業界に与える影響は大きく、運営店舗数が多ければ多いほど、負担は膨らむ。全国に392店舗、グループ全体で429店舗を運営するダイナムは、業界で最も負担を抱えている企業といっても過言ではないだろう。同社の電気使用量削減に向けた取り組みについて話を聞いた。


同社が本格的に節電対策へ取り組み始めたのは2009年頃から。これまで実施してきた取り組みを設備管理部の大谷光信さんが説明してくれた。

「以前から節電対策は行っていましたが、設備の見直しや切り替えなど、力を入れ始めたのは09年から。11年からは毎年全店・全施設に社内用の節電ガイドラインを配信しています。店舗の電気使用量の3分の1以上を占める空調設備については、現在さまざまな取り組みを進めています」と話す。

空調設備については09年以降、電気使用量計測装置、空調制御装置で、電力の見える化、ピークカットによる使用量の削減に取り組んでいた。

14年以降にオープンした新店からは、これらの設備の節電効果を上回るトータル管理システム「BEMS」を導入。「BEMS」は、電気のエネルギー使用状況や設備機器の稼働状況を一元管理する。そのデータはPCで閲覧可能。空調などのエネルギー機器を自動制御することで、電力使用量の削減、ピークカットを実現した。

さらに温度・湿度センサー、エネルギー機器からデータを収集し、空調の運転を最適制御する。21年までには、すべての既存店への導入も完了。昨年の夏からは、より省エネタイプになった「BEMS」に全店切り換え始めているという。

空調設備のさらなる節電対策として、昨年312店舗に導入したのは「パワーガード」。これは、分電盤やブレーカーのケーブルに装着するだけで高調波を抑制し、電気の使用効率を高めることで使用量を減少させるもの。

分電盤に装着するだけで効率的に電力が使用できる「パワーガード」

同じく設備管理部の長谷川一樹部長は同製品について「弊社の標準的な規模の店舗で試験導入し、経過を観察したときに、1年で空調室外機約8%の使用量削減に貢献することがわかりました。装着するだけなので、店舗に導入するのも時間はかかりませんでした」と導入の決め手を語った。

照度を調節できるLED導入 太陽光パネルの導入も進める

照明は12年までに全店LED照明を導入。17年からはアッパーライト、18年からは外灯もLEDに切り換えた。現在は店舗で照度を調整できるものに交換を進めている。

太陽光発電パネルの設置は、東日本大震災後がきっかけ。12年から自社で電力供給ができるように設置を開始し、これまで61店舗に設置した。当時のパネルは非常に高額だったことに加え、時間の経過とともに復興が進み、一時的に導入がストップしていた。だが、昨今の電気代の高騰を受け、再び設置を拡大していく考えだ。

「まずは初期費用やメンテナンス費用をかけずに導入できる、PPAモデルでの導入を考えています。自店は木造なので、耐荷重を考慮すると乗せられる枚数が限られますが、それでも約2割の電気をまかなえるという計算です。また太陽光発電パネルの購入から設置まで投資したときに、何年でペイできるのか、どのくらいの節電につながるのか、こちらも調査したいと思います」(長谷川部長)

エコモードで年間1億円の電気代削減を実証

遊技台を倉庫で管理する物流部が担当するのは、エコモードでの節電対策。なぜ設備管理部ではない、物流部も節電に取り組み始めたのか。

左から設備管理部の長谷川部長、植木純さん、大谷光信さん、物流部の阿部部長、岡﨑友紀さん

「撤去台を各地の倉庫で管理しているのですが、『ダイナム埼玉所沢店』では少しでも電気代を抑えようとしていたようで、回収した際に遊技機がエコモードになっていることに気付きました。預かった中古台を各店舗に送る際に、すべてエコモードで納品できれば全社で電気代を抑えられるのではないかという声が上がりました」と話すのは物流部の阿部英明部長だ。

それまで設置台をエコモードに運用していたのは、店舗全体の2割ほど。現場からは稼働に影響がでるのではないかと反対の声も上がったという

「エコモードによって、稼働が減少するという影響がないことは、運用していた店舗で実証済みです。通常状態とエコモード状態時にさほど変化がない機種が多いので、お客様の遊技意欲を削ぐことはないと思います」

節電効果を計算すると、一店舗当たり年30~40万円の削減につながることがわかった。昨年春、設置台のエコモード運用を全社で行うことが決定。店舗に中古台を送る際は、すべてエコモードに設定して送っている。


「設置中の遊技機に関しては、メーカーごとに設定の仕方をまとめたマニュアルを全店に配り、設定してもらいました。またエコモードを搭載していないメーカー様と協議し、搭載を検討していただくといった活動も行っています。弊社はグループ全体で400店舗以上ありますから、ざっと計算しても年間1億円以上の電気代削減となります。業界全体で見ると年間で20~30億円の削減につながるので、電気代が高騰するいまだからこそ、ぜひ検討してほしいです」

こうした企業努力が実り、全体の電気使用量は13年比で約17.5%削減。分類別に見ると、空調設備は約13.5%、照明は約60%の削減に成功している。設備管理部、物流部それぞれに今後の目標を聞いた。

「設備管理部としては、年2%ずつ電気使用量削減という目標を掲げています。そのために『パワーガード』のような新製品の導入や太陽光パネルの設置を進めていきます」(長谷川部長)

「メーカー様には現行の機能や遊技性を担保したなかで、消費電力を抑えた遊技台を開発してほしい。物流部ではそういう想いをメーカー様に伝えながら、一緒に改善できるように協議していきたい」(阿部部長)

※各店舗の取り組みの詳細は月刊アミューズメントジャパン5月号に掲載しました。


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