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2023年04月18日
No.10003437

全国に根付くポーカー文化③
ポーカーハウスを面で展開 「mブランド」5年で30店舗を目指す|m2R

ポーカーハウスを面で展開 「mブランド」5年で30店舗を目指す|m2R
いとう・やすかつ  分社前からm事業の事業部長を務める。サミーでは新規・DX推進本部部長。都内近郊で開業したアミュカジ新店や気になる店舗には積極的に足を運び、入店しやすさや雰囲気を確かめている

m2R
伊藤保勝 社長


サミーはテキサスホールデムに関する「m」事業から店舗ビジネスを切り分けて、100%子会社のm2Rを設立した。m TO REAL COMMUNITYの略。伊藤保勝社長はフランチャイザーとして、mブランドのポーカーハウスを全国に展開したい考えだ。

サミーがテキサスホールデムを軸とするm事業の立ち上げを発表したのは、2021年初夏。スマホ向けアプリ「m HOLD'EM(エムホールデム)」を7月に正式リリースし、プレイハウス「m HOLD'EM目黒」を8月にオープンした。

サミーがm事業を始めた当時、国内のプレイヤー人口は同社推計で約88万人だった。現在は100万人から200万人。パチンコ(758万人)、パチスロ(593万人)、麻雀(510万人)、将棋(620万人)並みに市民権を得るのはまだ先になりそうだが、人気YouTuberの動画やテレビ番組などによって、若年男性を中心に関心が広がっている。

それを物語るように、テキサスホールデムをプレイできるアミューズメントカジノが全国各地で増えている。国内には400軒から500軒あると見られ、都内では120軒から140軒に上るという。バカラやルーレット、ブラックジャックなど種類が豊富なカジノゲームの中から、テキサスホールデムだけに絞る店も少なくない。

こうした中、サミーはm事業から店舗運営に関連する領域を分社化。22年7月12日にm2Rを設立した。事業内容は、フランチャイズの展開やコンサルティング、アパレルグッズの企画・開発・販売。事業目的は従前どおり、テキサスホールデムを新たな文化として日本に根付かせることだ。

伊藤社長は「分社化は事業スピードを速めるため。手探りで始めた店舗運営も板についてきた。今後はフランチャイジーを募り、全国の主要都市に実店舗を増やしたい。直営の選択肢は残しつつ、面の展開を考えている」と意気込みを語る。

目標は5年で30店舗。ホール経営者だけでなく、ポーカー趣味が高じた遊技業界以外の経営者から問い合わせを受けているという。モデルケースでは、初期投資を3年程度で回収。m2Rが開業を支援する。

ポーカー人気は若者を中心に上昇中だ

アミュカジ成功の秘訣

アミューズメントカジノ業界で多店舗を展開する著名な法人は、「アキバギルド」などを運営するハンターサイト(東京都)と、「カジスタ東京」などを運営するJCI(同)が二大巨頭だ。グループ法人による系列店を含めると、運営店舗数はそれぞれ15軒前後。他方、フランチャイズで系列店を増やしているのがサークル(京都府)。「BLOW」を冠する店舗は全国に18軒を数える。

テキサスホールデムを主とするアミューズメントカジノの売上は、客数×単価の方程式が成り立つ。収容できる客数はポーカーテーブル数に比例し、単価はフード・ドリンクメニューで上乗せ。退店時にチップが残った場合は店舗が預かるため、残した量にもよるが、次回来店動機はおのずと形成される。

一方のランニングコストは、家賃、人件費、光熱費で大部分を占める。稼働中のテーブルにはディーラーが必ず着席するため、稼働テーブル数に比例して人件費も増える。ディーラーは一定時間で交代させることが望ましいため、必要なディーラー数はテーブル数を上回る。

「店舗売上はディーラーの力量で大きく左右します。チップを失った人に継続を促したり、グラスが空きそうな人に追加メニューを尋ねたり。これはディーリング技術とは別の能力です」

知らない人同士でテーブルを囲むテキサスホールデムでは、ディーラーが場の雰囲気を取り成す役割も果たす。プレイヤー同士の会話を盛り上げたり、良くない態度のプレイヤーをいさめたり。初級者が集まる店舗であれば、なおさら気遣いが求められる。

「ハードは投資次第で真似ることも超えることもできます。しかしソフトの要である”人“は、一朝一夕にはいかない。ここが成否の分かれ目です」

初心者の不安を解消する

テキサスホールデムの楽しさを多くの人に届けるには、店舗利用者を増やすよりアプリ利用者を増やすほうが効率的だ。アプリ「m HOLD'EM」のダウンロード数は約100万。月間のアクティブユーザー数は2万~3万人に上る。対して、店舗「m HOLD'EM目黒」の月間来場者数は2000人前後だ。

「店舗ではリアルの場の競技性を感じてほしい。表情や仕草といった目視できる非言語情報もテキサスホールデムの重要な要素です。アプリでルールを覚えた方には、ぜひそれを体験してほしい」

現存するアミューズメントカジノの中には、初心者に入店をためらわせる店舗がある。古びた雑居ビルの上層階だったり、必要以上に堅牢な門扉だったり。”初めて“の人ほど、アングラな面倒ごとに遭遇しないか、身構えてしまうものだ。

「室内の様子が屋外から見えることが、そうした不安を打ち消してくれます。立地と同じくらい、入店しやすいことは重要です」

店舗は2階部分。店内を見通せる大きなガラスが初心者の不安を和らげる

大きなスートのオブジェが窓越しに見える同店は、出入り口扉にも大きなはめ殺し窓を採用。取っ手に腕を伸ばす前から、室内の明るい様子が目に映る。ディーラーがルールやゲーム進行を説明してくれる初心者講習会には、毎月130人前後が訪れている。

「テキサスホールデムが広まっている実感はあるものの、文化と呼べるほどには全然至っていません。FC展開で市場規模やプレイヤーのすそ野を広げ、育ったフィールドでビジネスとして勝つ。伸びしろはまだ目標の3倍も4倍も残っていますから」

※『月刊アミューズメントジャパン』2023年4月号に掲載した記事を転載しました


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