もっと働きやすく、もっと選ばれるためのSDGs ④
SDGs推進に大切な3つの言葉
SDGs&Career 赤羽良太

前回はSDGsステップアップをご紹介させていただき、SDGs1.0から2.0に推進する必要があること、その上で重要な3つの言葉をお伝えいたしました。

今回は、その3つの言葉「地球規模」「バックキャスト」「誰ひとり取り残さない」について解説していきたいと思います。

【地球規模】

SDGs17の目標は独立しているわけではなく、互いが影響し合う要素があります。

例えば水源が不十分な地域では、水を確保するため子どもたちが何キロも先まで水を汲みに行かなければならないような環境があります。そのため、子どもたちの教育の機会が失われ、職業選択にも影響を及ぼします。さらに貧困の格差につながり、貧困は治安と衛生の悪化を招き、紛争にまで発展する要因となります。

目標6が解決できることで、目標1・4・8、そして目標16にもポジティブなアプローチを生み出すことも可能となります（図）。

「地球規模」という言葉は一見身近に感じにくいかもしれません。しかし、もしかしたら日本のとある地域の小さな取り組みが、地球規模の社会課題の解決につながる可能性があることを考えていくことがこの言葉の意味するところです。

「世界は繋がっている。地域から世界へ、世界から地域へ」。大小問わず各々の良い活動は進んで広報し、多くの人が知ることのできる環境を広げていくことが地球規模の活動に発展すると考えられています。

【バックキャスト】

変革を実現し、SDGsの目標達成に必要な思考がバックキャストです。

1961年、ケネディ大統領がアポロ計画を宣言しました。60年代に人類を月に上陸させるという壮大で実現不可能とも思われた宣言です。

残り9年という限られた時間で月面着陸することが先に決定されたことにより、多くの人が知恵と技術を絞り、イノベーションを生み出した結果、69年7月20日に2名の宇宙飛行士がアポロ11号で月面着陸を実現しました。

バックキャストとは実現不可能とも思われるような目指したい未来（目標）を先に設定し、取り組みを進める未来志向を意味します。

2050年までに二酸化炭素排出量ゼロを実現すると策定した「かわさきカーボンゼロチャレンジ」など、バックキャストで目標を掲げ取り組む事例も増えています。


【誰ひとり取り残さない】

とある地域でこのような事例がありました。ある下請企業で児童を低賃金で働かせる違法労働が発覚し、元請企業はこの事実を把握、すぐさま解決に動きました。

これは一見、児童の環境を守ることにつながったように思われますが、逆に仕事を失った児童は働き口を失って売り飛ばされてしまい、環境がさらに悪化するという事態となりました。

課題はパズル型ではなくルービックキューブ型で考える。一つの課題を解決することで、別の課題を生み出す懸念を考える視点が重要とされています。例えばデジタル化により得るものもあれば、職を失い賃金が低下する人たちが生まれる懸念やジェンダー平等が子どもの貧困につながる懸念などが想定されています。

何かを得ることで何かを失う、トレードオフをトレードオン（造語）に変えていく必要があること、誰ひとり取り残さないためには社会と対話を続け、事実を真摯に受け止めて次に活かしていく姿勢が重要とされています。

業界が目指す2030年の在り方

2030年に向けて、私はパチンコ業界がもっと地域に愛され社会から必要とされる存在であり、業界で働く人も遊ぶ人も笑顔でいられる未来を実現したいと想っています。そして、その未来は実現不可能ではないとも思います。

なぜなら、業界には優秀で人間味溢れる温かい人たちが多く在籍しています。非常に高いデジタル技術もありますし、日本全国約7000軒のホールの力があれば、想像できないような社会的インパクトを生み出せると信じているからです。

業界、そして私たち自身の未来を守るためにも、SDGsを通じて社会からもっと愛され必要とされる存在になる努力の価値は高いのではないでしょうか。

みなさんはどのような業界の未来を実現したいと想われますか？


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※『月刊アミューズメントジャパン』2023年4月号に掲載した記事を転載しました。