特集記事

特集記事内を

2023年07月11日
No.10003653

SEED/田村設計 『オリジナル制服』
店舗デザインと融和する制服をつくる
インナーブランディング効果でモチベーションも向上する

店舗デザインと融和する制服をつくる
田村尚志社長

田村設計は2018年、オリジナル制服の会社『SEED』を立ち上げ、ホールや私立高校、レジャー施設などの制服を数多く手がけてきた。設計会社が、制服づくりという畑違いの事業にどうして参入したのか、田村尚志社長に聞いた。

最初にホールの制服のデザインを手がけたのは、5年ほど前。「田村設計さんには、建物やインテリアの設計をお願いしているけれど、店舗デザインと一体感がある制服を作ってほしい」と依頼されたのがきっかけだ。

「田村設計に入社する前、ロンドンで建築を学んでいた時にファッションデザインにもふれる機会がありました。帰国後、いつかは制服もデザインしたいと考えていたので、その申し出をとてもうれしく思いました」

田村社長が建築を学んだのはイースト・ロンドン大学。留学中にロンドン芸術大学のカレッジの一つで、著名なファッションデザイナーを数多く輩出しているセントラル・セント・マーチンズの学生たちと知り合った。彼らのファッションデザインに関する知識や世界観を吸収し、一緒にファッションショーを開いた経験をもっている。

初めて手がけた制服のコンセプトは、「インテリアデザインとの調和」と「動きやすさの追求」。新しい制服を着たスタッフが移動するたびに、店内の風景が常に変化するような効果も狙った。

初めて手がけた制服

当時、ホテルのコンシェルジュを思わせるフォーマルな制服を採用したホール企業もあった。また、AKB48風のミニスカートのかわいらしい制服も流行していた。

「私の制服は、何よりもお客様に愛されるデザインであることを重視しました。フォーマルな制服は、洗練された上質感はありますが、少し堅苦しい感じがします。カジュアルで、お客様が気軽に話しかけられるようなデザインを追求しました」

LGBTQの認知度向上で制服の選択肢も広がる

ミニスカートの制服は、男性客には概ね評判がいい。しかし、着る側の女性スタッフからは「抵抗感がある」という声も上がる。特に30代・40代の女性スタッフが多い地方のホールではアルバイトの募集にも影響することもある。そこで、女性用制服はジーンズを採用した。

「制服には、多様性を持たせることが大事だと思います。例えば、ミニがダメというのであれば、女性もスラックスやジーンズにしたり、スカートもワンピースタイプやキュロットを選択できても思います。また、靴もスニーカーなどを自由に選べるようにすれば、仕事のモチベーションも上がるのではないでしょうか」

最近は、LGBTQという概念が多くの人に理解されるようになってきた。特に、必ずしも性行動に結びつかないトランスジェンダーやクエスチョニングというカテゴリーに属する人々も認知されるようになった。


「女性はスカートを履くもの、といったかつての社会通念は変化しつつあります。また、男性でスカートを履いてみたいという人がいても、今まではそういうことを口にすること自体がタブーでしたが、LGBTQの概念が知られるようになって、社会が多様性を受け入れるようになってきています」

スタッフが生き生きと輝き愛される店舗づくりのために

SEEDでは、デザインから、型紙づくりや縫製などを一貫して行っている。こうした仕組みづくりには、ロンドン時代に知り合い、帰国後ファッション業界で活躍している友人との人脈が役立っている。

「完全オリジナルの制服は、既製品よりもやや値段が高くなります。しかし、店舗の独自性を追求することで、外部に対するブランディングやインナーブランディング、採用のためのブランディングなどの効果が得られる大きなメリットがあります」

クライアントとの最初の打ち合わせの後、田村社長自らが描いたラフデザインを提出する。オーナーや経営幹部だけでなく、男女両方のスタッフにも出席してもらい、忌憚のない意見を聞く。その後、試作した制服を実際にスタッフに着てもらい、意見を聞きながら調整していく。


「私は、あくまでも完全オリジナルにこだわりたいと思っています。そして、制服は着る人に自分の仕事と職場に愛着と誇りをもっていただくインナーブランディングのツールでもあるので、クライアント様と共同作業をするプロセスが重要なのです」

SEEDの制服は、「遊技空間との調和」というコンセプトに裏打ちされたデザインでスタッフのモチベーションを上げる。生き生きと働く姿から生み出される活況感は、再来店の大きな動機になる。 

「コロナ禍が収束に向かい、いろいろなことが動き出しました。ホール業界においても新しい時代が始まる予感がします。こうした中で、スタッフが仕事で輝きファンに愛されるお店づくりをしていくために、SEEDのオリジナル制服が少しでもお役に立てればと思います」


※『月刊アミューズメントジャパン』2023年7月号に掲載した記事を転載しました。


パチンコ・パチスロ最新記事