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2023年02月28日
No.10003311

特集:美少女キャラクターがファンを掴む
美少女を求める時代に

美少女を求める時代に
なかやま・あつお
エンタメ社会学者。事業家(経営コンサルRe entertainment創業)と研究者(早稲田博士・慶應・立命館大研究員)、政策アドバイザー(経産省コンテンツIPプロジェクト主査)を兼任しながら、コンテンツの海外展開をライフワークとする。

INTERVIEW
エンタメ社会学者
中山淳雄さん


エンタメ社会学者の中山淳雄さんは、ブシロード執行役員として日本コンテンツの海外展開を担当してきたほか、エンタメコンサル会社「Re entertainment」を創業した、エンタメ業界のスペシャリストだ。そんな中山さんに、美少女キャラクターの人気の所以はどこにあり、どのような特徴を持つのか聞いた。【文中敬称略】

──美少女キャラクターは、いつ頃生まれたのでしょうか?
中山 美少女をセクシュアルに味わう流れが社会に生まれたのは、70年代のアニメ作品『海のトリトン』からです。その流れを、『風の谷のナウシカ』をはじめとする宮崎駿さんの作品や、高橋留美子さんの『うる星やつら』がいち早く取り入れた。しかし、漫画的な顔をしていながら大人の体つきをもつ美少女キャラクターの存在は、当初はあまり受け入れられていませんでした。70代以上の人には、「新人類が変なものにハマっている。排除しなければ」という考えを持つ人もいます。

──美少女キャラクターを好む人が増えたのはなぜですか?
中山 フィクション作品に対する視聴者の需要が変化していったからです。人々が見たいと思う作品の傾向は10年ごとに変わると言われています。1980年代の少年漫画全盛期に支持されていたのは、ライバルの存在や夢の実現など「社会的に何かを成し遂げる男らしさ」で、男性キャラクターを中心にした物語でした。しかし、90年代に「誰にも落とせない姫に好かれる男らしさ」が求められるようになり、男性キャラクターと美少女キャラクターの組み合わせで展開される物語が増えていきます。やがて美少女キャラクターそのものの需要が「男らしさ」の需要を上回り、美少女キャラクターを中心にした作品が増えました。

──美少女コンテンツを受け入れられる人とそうでない人の違いは何ですか?
中山 接触頻度の多さです。団塊ジュニアの世代から、漫画を読んだりファミコンで遊んだりするのが普通の感覚になりました。これを10代、20代のうちに過ごした人は、成長した後もそのコンテンツを消費します。こうして連鎖していくため、団塊ジュニア世代以降の人はセクシュアルなものも受け入れやすい傾向にあります。また、日本の美少女は今海外でコンテンツ化され、人気が爆発しています。ロックダウンの影響で動画配信の需要が1.5~2倍になり、この2年でアニメに対する海外需要が一気に伸びています。欧米人も含めて美少女キャラとの接触頻度が上がり、国内外を問わず美少女に対する「こういうのが可愛いんだ」という共通項が生まれ、共有できるようになりました。共通項が生まれることによって、フィギュアなども買われています。共通項を元にファンに祭り上げられながらコンテンツが大きくなりました。

──コンテンツにのめりこんでいくにつれて購入する商品はどのように変わっていきますか?
中山 入り口の多くは、SNSやYouTubeです。そこからアプリゲームで遊ぶようになり、課金してガチャを回すようになります。やがてイベントなどに行くようになると、バッジなどの「消えもの」グッズを記念に買っていきます。成熟段階になると、5000円のタオルや1万円以上するフィギュアも買うようになります。高額グッズ購入者は、お金をかけた事実やグッズの捨てにくさから、そのコンテンツをずっと味わおうとするようになります。グッズをたくさん買ってもらうことで、ファンが卒業しにくくなり、根強い定住ファンになる。グッズ展開が可能なコンテンツの強みです。

※『月刊アミューズメントジャパン』2023年2月号に掲載した記事を転載しました。


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