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2023年01月12日
No.10003228

広告宣伝の新潮流
デジタル音声広告の可能性
成長中の広告メディアに迫る

デジタル音声広告の可能性

インターネット上の音声メディアに広告を出稿する、デジタル音声広告が注目を集めている。これまでラジオ広告を出稿してきたパチンコ業界とも親和性が高い、国内外問わず成長中の広告手段だ。

デジタル音声広告の配信対象は、Spotifyのような音楽ストリーミングサービスや、radiko(ラジコ)をはじめとするラジオアプリ。デジタル領域の調査会社・デジタルインファクトによると、国内でのデジタル音声広告の市場規模は2019年にはまだ7億円ほどだったが、21年には50億円にまで成長しており、25年には420億円にまで市場拡大が進むと予想されている。アメリカではより大きな市場が形成されており、ニューヨークに本部を置くネット広告業界団体・IABの調査では、21年には5848億円(22年4月段階、1ドル120円計算)の市場規模が存在する。


では、なぜデジタル音声広告の需要が高まっているのだろうか。強みを二つ、ピックアップしてみたい。

スキップされにくく
完全再生率は90%超


デジタル音声広告の強みの一つはリスナーに最後まで聞かれやすいことだ。リサーチ&マーケティング支援会社・ネオマーケティングの「動画広告の接し方に関する調査」によると、YouTubeなどでの動画メディアでは回答者の38.8%が広告を「必ずスキップする」、56.7%が「スキップすることが多い」と回答しており、動画広告があまり見られていないことが伺える。それに対し音声メディアは完全再生率(最後まで広告を聞かれる割合)が非常に高い傾向にある。

各社が公表しているデータによると、Spotifyの完全再生率は90%、radikoは98%。音声媒体は動画媒体と違ってスマホ画面を見る必要がなく、移動中や作業中に「ながら聴取」されやすい傾向にあるため、広告もスキップされにくいのだと推測できる。

デジタル音声広告を専門に扱う企業・オトナルと朝日新聞社が共同で行った「ポッドキャスト(インターネットでラジオ番組をはじめとする音声データを配信するサービス)国内利用実態調査2021」によると、ポッドキャストの聴取シチュエーションで最も多かったのは家事中で35.2%。趣味の作業中が27.1%、車の運転中が21.5%、歩いている時が21.2%と続き、音声メディアが「ながら聴取」されていることを裏付けている。これらの環境にいる消費者は動画広告やバナー広告などでは接触できない人たちだ。他の広告媒体ではアプローチしにくい生活者に訴求できるのも大きな強みだ。


20年6月、アメリカの大手データ分析会社ニールセンとSpotifyは「広告接触者への脳波計測ブランド認識度調査」を実施した。この調査ではまず、広告出稿企業A社とその競合2社のブランド名を被験者に見せ、ベースラインの脳波を計測。次にA社のブランド広告を「音声のみ」「動画のみ」「音声+動画」の三つの手段で被験者に提示した上で、A社を含めた3社のブランド名を再度見せて脳波を計測し、最初に計測した脳波と比較した。

その結果、ブランド伝達強度(広告とブランドの結びつきの強さ)で最も高い数値を示した手段は「音声のみ」だった。Spotifyジャパン(Spotifyの日本支部)のオフィシャルサイトでは「ブランドに関する情報のほかにもさまざまな要素で構成される動画より、まさに音声だけで構成される音声広告のほうが頭に残りやすいのではないか」との見解が示されている。また、Spotifyとニールセンが17年に行った調査では、デジタル音声広告はディスプレイ広告よりもブランド想起効果が24%高いというデータが出ている。広告理解度も28%高く、関心・購買意向は2倍という結果だった。

地上波ラジオ広告にはない
デジタル音声広告の利点


では、同じ音声のみの媒体である地上波ラジオ広告とはどのような違いがあるのだろうか。両者を比べるとデジタル音声広告の強みは主に二つある。一つめは、動画広告やバナー広告などと同様に、位置情報や年齢など、細かい情報と紐づけた広告配信が可能な点だ。例えば「店舗から〇キロメートル以内への行動履歴のある、パチンコに興味・関心が高い20代の男性にのみ配信」といったように、細かく条件を絞り込める。もう一つは、データ観測が可能な点だ。端末で聞かれるデジタル音声広告は、「何回再生されたか」というレポートを出すことが可能で、広告出稿元に必ずデータが返ってくる。再生連動型課金のシステムを採用しているポッドキャスト番組が存在するのも、デジタル音声広告ならではと言える。

また、地上波ラジオ番組とデジタルオーディオでリスナーの聞く姿勢が違う、というデータをSpotifyが出している。地上波ラジオは流したままでも次々と番組が変わっていくので聞き流されやすいが、デジタルオーディオは流す番組を自己選択するため、集中して聞かれやすい、というものだ。

21年2月には、日本で初めて「インタラクティブ音声広告」が導入された。「住まい探しに興味ありませんか?」のような問いかけにユーザーが「はい」「いいえ」など音声で回答すること、その後の広告の内容が変わる、といったものだ。今後もさまざまな形のデジタル音声広告が登場し、発展すると予想される。パチンコホールの広告宣伝としても、新しいプロモーションの手段として一考の予知がありそうだ。


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