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2023年01月12日
No.10003229

広告宣伝の新潮流
すべての空間に音声広告を

すべての空間に音声広告を

INTERVIEW
株式会社 オトナル
八木太亮代表


オトナルは、「広告枠の創出」「広告枠の販売」という二つの機能を備えたデジタル音声広告におけるオールラウンダー企業だ。代表の八木太亮さんは、デジタル音声広告市場を発展させるべく、自身のポッドキャスト番組「オトマーケ」での情報発信を中心に、啓蒙活動に取り組んでいる。デジタル音声広告市場の成長背景や、パチンコホールの広告媒体としての可能性について聞いた。

番組・媒体・機器の充実で
ラジオの時代が再来する


──はじめに経歴を聞かせてください。
八木代表(以下、敬称略) 大学卒業後3年間はコピー機の営業をしていました。その後起業し、左利き専門の楽器のネットショップやPCバッグのメーカーなど、いろいろな事業を模索した後に、2013年から「ビール女子」というウェブメディア事業を運営。2018年に事業譲渡してデジタル音声広告市場に足を踏み入れました。今の形態で事業を行うようになったのは2019年からです。当時、国内でこのデジタル音声広告を扱っていたのは私たちと電通さんくらいでした。

──なぜデジタル音声広告だったのですか。
八木 注目したきっかけは、スマートスピーカーが日本で発売されたことです。聴覚のメディアであるスマートスピーカーは私がそれまで営んでいた視覚メディア(WEBメディア)とは異なり、話しかけるだけでラジオや音楽などのコンテンツを引き出せます。両手が塞がっていても、音声ならコンテンツを楽しめる。音声の魅力を実感し、強く関心を抱きました。例えば、現代の日本では自宅にラジオ端末がある人は少ないと思いますが、スマートスピーカーが普及すればもう一度ラジオの時代が来るのではないかと。調べてみると、2018年の段階でアメリカではすでに2700億円のデジタル音声広告市場ができていました。日本のラジオ広告市場は常に1200億円前後を推移しているのですが、アメリカにはデジタルだけで2倍以上の市場がある。しかも毎年市場が伸びている。2021年に至ってはアメリカで最も成長したメディアはオーディオだったという調査もあります。この流れが日本でも起こると確信しました。

──事実、日本でもデジタル音声広告市場は成長の兆しを見せています。これにはどのような背景がありますか。
八木 三つの要因があります。一つ目は、ワイヤレスイヤホンの普及です。ワイヤレスイヤホンがあれば、生活時間のいつでも音声を聞くことができる。2016年の発売以来売れ続けており、今後も広まっていくことが予想されます。ワイヤレスイヤホンが普及することは、音声に触れる機会が増えることにつながります。二つ目は、プラットフォームの充実です。かつてポッドキャストを聞ける媒体はAppleとニッチなサードパーティ製のものだけでしたが、2018年にSpotifyとGoogleが、2020年にAmazonが参入してきました。聞ける媒体そのものが増えたため、音声媒体そのものも伸びています。三つ目は、コンテンツの充実です。現在、さまざまな新聞社や雑誌社など、活字媒体がポッドキャストに参入してきています。活字を読むAIが進化して、番組を作りやすくなったこともこの流れを加速させています。例えば、朝日新聞のポッドキャスト番組のひとつは、WEBの文字を読み上げる「音声合成」の技術を使って番組を作っています。海外メディアでも、アメリカのワシントンポストはすべての記事を音声化しています。

パチンコ店が効果的に
広告を出稿するには?


──デジタル音声広告に適しているジャンルはどのようなものでしょうか。
八木 ビジュアルで見せる必要のない、無形商材やサービスが適しています。パチンコも適性が高く、既に出稿事例もあります。

──パチンコ店が出稿しようとする場合、どのような方針が効果的ですか?
八木 広告内容に関しては、地上波ラジオ広告と同様に、店舗名や所在地などの刷り込みを狙うことを推奨します。私はパチンコ・パチスロはやりませんが、地上波ラジオ広告の影響で地元のパチンコホールの屋号を認知しています。また、デジタル音声広告は地上波ラジオ広告と異なり、位置情報と絡めたマーケティングが可能です。そのため、対象店舗から10キロメートル以内というように商圏を定めた広告配信もできます。サードパーティデータ(他のデータ会社が提供しているデータ)と連携し、パチンコが好きな人、競馬が好きな人、お酒が好きな人、などの属性でターゲティングする「プログラマティック広告」もお勧めします。位置情報の履歴を使えば「1年に3回以上競馬場に行く人」のようなデータを作ることもでき、細かいターゲティングが可能です。ただし、このようなターゲティングが可能なものはSpotifyやradikoのようなアプリ媒体に限られます。一方で、ポッドキャスト番組に出稿したい場合は、県単位のエリアでターゲティングして番組を選ぶことを推奨します。このケースではお笑い番組などが適しているのではないでしょうか。「お笑い芸人が喋っていたらパチンコホールの広告が流れてきた」というようなことも可能です。

──今後の展望を聞かせてください。
八木 日本にアメリカのようなデジタル音声広告市場を作るのが私たちのミッションです。空間、社内、生活空間すべてに音声コンテンツと音声広告がある状態を目指しています。車中の人にのみアクセスできる広告枠を作るほか、街頭や店頭の音声も入札できるようにしたりして、広告枠を増やしていきたい。広告以外にも、パブリッシャーとして「音声をどうやって収益化するか」といったことも常に考えており、番組のリスナー課金のようなビジネスも視野に入れています。



やぎ・たいすけ
2013年にウェブメディアを運営する株式会社オトナルを創業。2018年に音声コンテンツと音声広告領域の事業に特化。アドテクノロジーを活用した広告出稿からクリエイティブ制作までを支援し、過去800件以上のデジタル音声広告の実績を持つ広告事業を展開。また、ラジオ局や新聞社、出版社向けの音声コンテンツおよび広告枠の開発とデータ運用支援も行っている。著書:『いちばんやさしい音声配信ビジネスの教本 人気講師が教える新しいメディアの基礎』(インプレス)twitter:@pyusuke


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