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2022年06月23日
No.10002885

企業力を向上させるソリューション③
2025年の崖を乗り越えるためにDXは最強のツール

2025年の崖を乗り越えるためにDXは最強のツール

DX(Digital transformation)という言葉が、日常的に使われるようになってきた。しかし、DXの本質が理解されず、言葉だけが一人歩きしている感もある。DXとデジタル化はどう違うのか、また、DXによってホール企業はどう変わっていけるのかを考えた。

単なるデジタル化ではない
DXの本質を知ることが重要


DXという言葉は知っていても、意味を正しく理解している人は意外と少ない。「Zoomを使ってオンライン会議をしている」「ペーパーレスにして、グループウェアやPDFで情報共有している」。自分の会社で取り組んでいるDXについて聞くと、こうした例を挙げる人も多い。

しかし、これらは今までの業務をデジタル化しただけであって、本質的には何も変わっていない。だから、「直接会わないと熱が伝わりづらい」「紙の方が一覧性があって便利」といった反論が出てくるのである。企業のDXは「デジタル経営戦略」と訳した方がその内容を理解しやすい。目的を明確にしてデジタル化すること、そして1つの業務だけではなく、組織全体を意識するのがDXだと言ってもいいだろう。

昨年11月に経済産業省所管の独立行政法人情報処理推進機構(IPA)がDXポータルサイト「DX SQUARE」(https://dx.ipa.go.jp)を立ち上げた。このサイトは、企業のDX活用事例を動画で紹介したり、API(Application Programming Interface)の説明を通して生活の中に溶け込んでいるDXの例を挙げるなど、非常にわかりやすい構成になっている。

このサイトを一通り見た後に、「デジタル化を通してどんな課題解決に取り組んでいるか?」ということを意識すれば、DXに対する理解はより深まるだろう。

台湾のIT相のオードリー・タン氏は、日本のテレビ番組に出演した際に、「DXとは、ITで人と人とを結びつけ、新しい価値を生み出すこと」と定義していた。例えば、車のシェアやUber EatsなどもDXによって生まれた新たな価値だ。企業でも、それは同じで、例えば、遠方のクライアントとオンラインで打ち合わせをする際に、今までは旅費や時間の都合で参加できなかった開発担当者などが詳しく商品のコンセプトを紹介すれば、実際に会って行うプレゼンテーションとは別な形で「熱」を伝えることができる。まさに、人と人を繋いで、新たな価値を創造するのがDXだ。

ホールがDXに取り組む際
こうすれば運用が実現する


ザック・ストラテジー代表取締役の柴田一樹氏は、月刊アミューズメントジャパンで、「パチンコ業界 DXに向けて」というコラムを連載している。DXの基礎知識やホール企業がDXを導入する際の留意点などがテーマで、初心者にも非常にわかりやすく解説している。これまでの連載の中から、ホール企業に参考になりそうなポイントを抜粋して紹介させていただく。

ホール企業がDXに取り組むにあたり、外部のエスアイヤー(システム設計・運用・サポートをする会社)に委託する場合がある。しかし、彼らはDXのエキスパートであっても、必ずしもホール運営の知識をもっているとは限らない。そのため、課題抽出から要件の決定まで、依頼側の納得いくレベルに到達できず、運用までたどり着けない場合も多い。

柴田氏は、DXの運用を目指すならば、「何をやるか」「どうやるか」よりも、まずは「誰がやるか」を決めるべきだと言う。ホール企業は、熱意をもった社員に「何をやるか」から決めてもらう。トップは、この社員と協議し、全社にそのビジョンを発信し、活動の支援をする。様々な課題を乗り越え、運用までたどり着ければ、その社員はホール企業の貴重な人材に成長する。

柴田氏のコラムではホールでのDXへの取り組みの事例として、サイネージの運用改善を取り上げた。あるホールで労務超過の要因をピックアップして可視化したところ、複数ある原因の一つがサイネージの運用にあることがわかった。対策として、「重要なコンテンツは外注、それ以外は素材をダウンロードする」「手間のかからないクラウド配信を利用する」ことが決まった。その結果、従来6時間かかっていた作業が1時間20分に短縮。このシステムは全店で採用された。サイネージの運用に限らず、問題がありそうな業務を可視化することで、課題を浮き彫りにして改善することが重要だ。このようなサイクルを繰り返せば、自然とDXを取り入れたイノベーティブな企業に変わっていくはずだと柴田氏は説いている。


業務遂行の主体が人から
デジタルワーカーに変わる


「2025年の崖」とは、日本企業の多くが採用している既存のITシステムが老朽化・肥大化・複雑化・ブラックボックス化することで、デジタル時代の変化についていけずに、企業の競争力を低下させることを言う。25年から30年にかけて、その損失は年間で最大約12兆円と試算されている。日本のデジタル化の停滞は、現場重視による「人中心の業務」という日本特有のマインドが、強く影響していると考えられる。

2025年の崖を乗り越えるためには、業務遂行の主体を人からデジタルワーカーへと切り替える経営改革が必要とされる。もっとも、業務をデジタルワーカーに任せることで、やりがいや生きがいがなくなるわけではない。むしろ、新しい価値を生み出すための戦略や企画が中心となり、社員には創造性の発揮とチャレンジ精神が求められるようになる。こうした変化について行きながら、企業が理念やビションを実現する上で、DXは力強いツールになっていくはずだ。


※『月刊アミューズメントジャパン』2022年6月号に掲載した記事を転載しました。


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