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2023年08月11日
No.10003707

LINEの実質値上げで配信回数を減らすのは悪手!
文=野島崇範・プラスアルファ By Nojima Takanori

LINEの実質値上げで配信回数を減らすのは悪手!
のじま・たかのり/ 三重県生まれ。北海道教育大学卒。毎年年間1000店舗以上のパチンコ店を調査。広告を6つのポイントで数値化して、その仕組みを売り場の書籍「あなたの売り場、太っていませんか?」で執筆。売り場プロモーション診断士検定を8年前に立ち上げ2020年には1200名以上が受験。

[コラム]多様性の時代に求められるSNSとWEB広告の運用 vol.3


本コラムの1回目、「多様性の時代だからこそ、多様性に合わせた情報発信が必要不可欠」ということを書きました。その情報発信の起点を、月間9,200万人のアクティブユーザー数を誇るLINEに集約することが可能なので、各SNSをLINEに紐づけことを勧めています。

しかし、LINEは6月1日から実質値上げすることを発表しました。従来の配信方法のままでは45,000円以上の値上がりが想定されるため、LINEを起点に配信するどころか、「今後は配信回数を減らして費用上昇を抑える」という話を頻繁に耳にします。しかし戦略なく配信回数を減らすことは危険です。その理由と、LINEの配信費を30%以上削減できる新たなLINEの配信手法について解説します。

広告の目的は認知の向上です。我々は瞬間的に頭の中に浮かんだものしか消費できません。例えば夕飯を食べようと思った時に、「回転寿司を食べよう。回転寿司なら『スシロー』または『くら寿司』、『函太郎』のどれにしよう?」と、想起されたブランドの中から選択しています。つまり、店舗の視認性が非常に高く好立地にある場合を除けば、瞬間的に想起されるほど印象に残る認知を事前に獲得していなければ、お客様に選ばれることは非常に困難なのです。自店の認知向上を侮ってはいけません。では、認知向上はどのように形成することが可能なのでしょうか。


それは、繰り返し同じ情報を伝えることです。同じ情報を繰り返し見てもらうことで、脳科学的な見地では大脳辺縁系の海馬体の一部である海馬が刺激されて、中長期記憶に情報が保管されます。そして、心理学的な見地では単純接触効果を引き起こして、元々興味がなかった物事や人物に対して、興味を持つようになります。つまり、繰り返し同じ情報を見てもらうことは、潜在顧客に記憶されて、好感度を高める可能性もあるということです。

安易にLINEの配信回数を減らせば、御社の店名を目にする機会が少なくなるため、パチンコを遊技しようと思った時に、御社の店名が瞬間的に想起されず選択肢から外れます。だからこそ、LINEの配信回数を減らすことは中期的な集客低迷の危険性を秘めているのです。
しかし、理論的な話と実態は異なります。経費削減を徹底する時代に、LINEの配信費用の増額は頭を悩ませる大問題です。そこで、LINEの既存の配信システムを使って、集客に繋がる可能性の低い「配信しても意味がない」お客様への配信を止めます。今回は、LINE配信を効果的なお客様に絞って配信する2つの手法を紹介します。


最も効果的な絞り方はオーディエンス設定の「インプレッションリターゲティング」です。インプレッションリターゲティングとは、配信メッセージを開封したユーザーを対象とした配信方法です。配信したLINEを開封しなければインプレッションとしてカウントされないため、インプレッションしたということは開封したお客様の数を示すと解せます。

この設定方法はデータ管理のオーディエンスというところから簡単に設定できます。この配信方法が効果的な理由は、全く興味のないお客様はLINEを開封しないということにあります。LINEが届いても開封されず放置または削除されます。読者の皆様も開封しないLINEに心当たりがあると思います。人間は習慣の生き物です。開封する習慣がなくなったLINEは開封されずに放置されます。そして、しばらく開封されずに未読メッセージが貯まるとブロックされます。

当社のLINEはターゲットリーチ数が974人(ブロック数を除いた数値)です。そして過去のLINE配信のインプレッションから算出する開封率の平均は67%です。

インプレッションリターゲティングで配信するとターゲットリーチ数は600人(厳密には年齢も絞り込んだ配信)に減りますが、開封率は87.5%となり、結果的に開封してくれる人数に大差はありませんでした。いつも開封してくれる可能性の高いお客様へ配信ができたことが分かります。つまり、「配信しても意味がない」可能性が高い374人には、配信費を払って配信しなかったと言えます。ただし、今回は紙面の関係で割愛しますが、この配信ではクリック率は低かったため投稿内容に課題が残りました。

パチンコ店のLINEの開封率は店舗差が大きいので平均値で語っても意味はありません。ただ、開封率40%~50%のお店が多いです。つまり、インプレッションリターゲティングを使用すれば、1回あたり5割~6割の費用を抑えて配信することが可能ということです。
さらに、地域を絞った配信もお勧めです。近年、P-WORLDにLINEの友だち追加ボタンを設置している店舗が増えています。そのため店舗所在地から離れた都道府県に居住するユーザーが友だちに追加されるケースも増えていて、結果的に、来店しない可能性が高い方への配信も増えています。そのため、あなたのお店の店舗所在地の都道府県のみに「地域」設定して配信することをお勧めします。配信先を「すべての友だち」から「絞り込み」に変更すると、プルダウンメニューに対象を設定できるフィルターが現れます。


「地域」のほかにも、「友達期間」や「性別」「年齢」「OS」で配信対象を絞ることが可能です。例えば、大海物語5の新台導入告知であれば年輩のお客様を中心に配信、『スマスロ北斗の拳』であれば若年層から中年層に配信、といった具合です。

「LINEの配信費用が上がるから配信回数を減らす」という選択は悪手です。開封率とクリック率を見ながら、集客に繋がる可能性の高いお客様へ絞り、配信対象を設定してください。配信回数を減らさずに効率的で効果的な、成果の生まれるLINE配信へ変革しましょう。

次回はWEB広告について弊社の齋藤裕樹がコラムを記載します。交互に執筆します。


★本コラムは月刊アミューズメントジャパン2023年03月号に掲載したものです。最新のコラムは月刊アミューズメントジャパンをご覧ください。


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