株式会社ブライト
［INTERVIEW］カジノ業界に多くの日本人を輩出　日本カジノスクール 大岩根成悦校長
20年目を迎えた日本初のディーラー養成機関

日本カジノスクールは2004年に日本初のカジノ人材育成スクールとして開校。今年、20年目を迎えた。日本にカジノが開業した際に人材を供給する機関として長年期待されてきたが、ようやく2030年の大阪IR開業が見えてきた。
文・写真＝田中剛（編集部）／text & photo by Tanaka Tsuyoshi

──日本のカジノ／IR合法化推進に携わってきた人で大岩根校長を知らない方は、まずいないでしょう。「マツコの知らない世界」などのバラエティー番組にも出演されていますし、NHK WORLDの番組でも卒業生やスクールが紹介されました。しかし、読者の多くは大岩根さんをご存じないかもしれません。まずはご経歴、カジノとの出会いをお教えください。
大岩根　私は山口県の出身なんですが、大学時代に「せっかく東京に来たのだから、地方にはない何か変わった仕事を経験してみたい」と考えてアルバイト情報を探したのがきっかけです。そこで見つけたのが、当時、新宿にあった「パンドラルーレット教室」というアミューズメントカジノ店のアルバイトです。その当時私が持っていたカジノのイメージは、「薄暗くて怖いところ」という程度。ところが予想と異なり、店内は華やかな雰囲気で、ちょうどデパートの買物袋を携えた年配のご夫婦が上品に遊んでいました。ミス日本コンテストを主宰していた美容研究家の和田さん（※）という方がオーナーでしたので、お客様も品のある方が多かったようです。
（注）「パンドラルーレット教室」は、ミス日本コンテストを1967年に復活させた美容研究団体「和田研究所」創設者の和田静郎氏が1973年に開業。ルーレットのほかブラックジャックやバカラテーブルもあった。和田氏は1964年にマカオにカジノ視察に行ったのち、同年に「日本ルーレット研究会」を設立した。

──実際のカジノとの出会いは？
大岩根　パンドラルーレット教室で働き始めて数カ月後、1991年にディーラーとして豪華クルーズ船「飛鳥」に乗りました。卒業後、いったん普通の会社に就職したのですが、やはりカジノに関わりたいという想いがあったので、「飛鳥」が100日間かけて世界一周するのを機に船に戻りました。これは1996年のことなのですが、日本のクルーズ船が世界一周に出ることは戦後初めてのことだったのです。学生時代から合わせて約10年、クルーズ船のカジノで働き、世界のさまざまな都市に寄港するたびにそこにあるカジノを見物しに行きました。

──2004年に日本カジノスクールを開校されますが、そのきっかけは？
大岩根　2002年に石原都知事（当時）が都庁の展望台で模擬カジノイベントを開催し、同日に室伏哲郎先生が都内のホテルで別のカジノイベントを開催するなど、カジノ合法化の機運が高まっていました。人材育成機関が必要だと考えたわけですが、そもそも国内にカジノがないから船から降りたら私には経験を活かせる仕事がない（笑）。そういうこともあって、日本カジノスクールを作ったのです。

──国内初のカジノディーラースクールですね。
大岩根　私は「飛鳥」でディーラーを経てマネージャーをしていたのでカジノディーラーに必要な技術を教えることはできますが、体系立てたプログラムにするために2003年にラスベガスのいくつかのスクールを訪問しました。特にPCI Dealer Schoolは参考にしましたし、いまも交流があります。

卒業生1000人 3割が海外のカジノへ

──9月に東京校の第39期の卒業式が行われ8人が卒業しました。大阪校と合わせこれまでの卒業生が1000人を超えました。卒業後はどのような道に進む方が多いのでしょう？
大岩根　日本カジノスクールは3カ月、6カ月、1年のコースがあり、通われる方の中にはご自身で事業をされている方もいますし、20代前半の方もいますのでさまざまです。スクールを立ち上げた翌年にはクルーズ船『飛鳥II』内カジノの運営を受託したので、クルーズ船には多くの人材を供給しました。卒業後に海外のカジノに行った方は300人ほど。同じく2005年にはサイパン領テニアンのカジノが卒業生の受け入れをしてくれて、これまで把握しているだけで55人が採用されました。最も多くの卒業生を採用してくれたのはシンガポールのマリーナベイサンズで、これも把握しているだけで約60人です。海外で働く卒業生が増えると、彼らが転職した先のカジノが新たに卒業生を受け入れてくれる、ということが起こります。今では受け入れ先は韓国、カンボジア、バヌアツ、カナダ、オーストラリア、ヨーロッパなどに広がっています。つい最近ですが、豪華クルーズ船『クイーンエリザベス号』に採用された卒業生もいます。

──海外に行かない場合、国内のアミューズメント施設で働く方が多いのですか？
大岩根　2000年代には都内でもアミューズメントカジノ店は数えるほどしかなかったのですが、弊社が運営を受託するケースが多かったですね。森ビルさんの『CASINO VENUS』（お台場）、セガさんの『SEGA渋谷』（渋谷）、アドアーズさんの『アディクト』（銀座）、マルハンさんの『スーパーウェーブ柏店』（柏市）などを受託させていただいたので、スタッフの多くは卒業生でした。

──近年、アミューズメントカジノが増えていると感じますか？
大岩根　正確な統計はないのですが、ざっくり言えば2019年に全国で約100店舗だったアミューズメントカジノ店が、いま400店舗になったと言われています。間違いなく、2000年からのポーカー人気がすそ野を広げ、競技やeスポーツと捉えるプレイヤーを増やしました。スクールに関して言えば、「ポーカーのディーリングだけ学びたい」という問い合わせが増えましたし、ポーカーを遊び始めたことをきっかけにディーラーという仕事に興味を持って入学してくる方も増えました。

──貴社は直営施設として、ディーラースクールだけでなく、ポーカー教室も運営していますが、こちらの開業は2016年です。
大岩根　我々は世界中のカジノに視察に行っていますが、海外で開催される大きなポーカー大会も見ていました。日本人の参加者が目立ち始めたと感じたのが2015年頃で、これから国内でポーカー人口が増えていくだろうと感じて「JCS Hold'em」（新宿）を開業したのです。ここ2、3年の急増ほどではありませんが、この頃からじわじわ増えていたと思います。近年の変化については、海外のカジノ事業者の見方が変わったということがあります。

──どのようなことでしょう？
大岩根　先ほどご説明したように、卒業生が増えるにつれて、日本人の採用枠も広がっているのですが、応募資格で「経験2年以上」としているケースもあります。近年は日本のアミューズメントカジノ店での勤務経験をカウントしてくれるようになったのです。


国内カジノ開業までに 新たなコースを設けたい

──先だって大阪府・市が、夢洲に開業予定の統合型リゾート（IR）について事業者と実施協定を締結しました。早ければ2030年に開業する見込みです。
大岩根　時間がかかりすぎましたね。私が日本カジノスクールを開校した時、2006年頃には国内のカジノが合法化されてその数年後には開業するんじゃないかと思っていました（笑）。今から6年の間に、さらに多くの卒業生がクルーズ船、海外カジノ、国内アミューズメントカジノ店で経験を積むでしょう。2030年に国内にカジノが開業したとき、間違いなく多くの卒業生たちが経験者としてフロアに立っていることでしょうし。

──日本カジノスクールは来年20周年ですが、何か抱負はありますか？
大岩根　第一に、卒業生が国内で経験を積む場を増やしていきたいです。具体的にはアミューズメントカジノ施設を年に2カ所ずつくらいのペースで出店したいです。第二に、アミューズメントカジノ施設の開業支援事業にも力を入れたいです。これは特に、立ち上げ時の人材育成の部分です。第三に、準備に数年かかるかもしれませんが、スクールのプログラムを拡充したいです。

──ディーラーの上位職向けのコースですか？
大岩根　日本カジノスクールはディーラー養成機関として開校しましたが、すでにディーラーを管理する立場を目指す人のための「カジノスーパーバイザー・コース」があります。今後は、さらに上位職であるピットマネージャーやシフトマネージャーなどのマネジメント層を目指す人のためのコースを設けたいと考えています。自分のテーブルの運営にだけ責任を持てばいいディーラーと違い、マネジメント層は、ある区画やフロア全体など複数のテーブルの状態、業績指標の数値を把握しながら、不正防止にも目を光らせ、利益の最大化を目指さなければなりません。ディーラー経験者が、当校が今後拡充するプログラムを学ぶことで、大阪IRの開業時にはマネージャー候補として採用される道筋を作りたいです。


会社概要
スクール：日本カジノスクール東京校、日本カジノスクール大阪校
直営アミューズメント施設：CASINO VENUS（東京・お台場）、JCS Hold’em（東京・新宿）、CASINO CAFE なんばマルイ（大阪・なんば）