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2023年04月14日
No.10003417

全国に根付くポーカー文化①
プロも初心者も関係ない それがポーカー最大の魅力|小林みやひさん Interview

プロも初心者も関係ない それがポーカー最大の魅力|小林みやひさん Interview
撮影協力:『m HOLD'EM 目黒』

INTERVIEW
ポーカープレイヤー・ディーラー 
小林みやひさん


小林みやひさんは、ポーカースポット・ガットショット専属のポーカーディーラー。テキサスホールデムのプレイヤーとしても活躍し、昨年韓国で行われた海外トーナメントで初優勝を飾った。ここ数年はトーナメントで実況をこなすなど、多方面で活躍している。そんな小林さんにポーカーの魅力や近年の人気ぶりについて聞いてみた。【文中敬称略】文=野﨑 航(本誌) 写真=石川 桂(本誌)

──現在の職業について教えてください。
小林 メインはポーカーディーラーです。今は都内に2店舗運営しているガットショット専属でやらせていただいています。ここ2~3年でトーナメントのMCや実況をやらせていただく機会も多かったので、ポーカー実況者と言われることもあります(笑)。

──どのようなきっかけでディーラーになりましたか。
小林 メイドカジノ『アキバギルド』で働き始めたことがきっかけでした。専門学生だった頃、家と学校の往復という日々で退屈していました。そこで学校の友達に「暇だったらうちでバイトしない?」と言われて、「なんのバイト?」と聞いたら「秋葉原でメイドしてる!」とのことでした。その当時は秋葉原でメイドさんができるのって、女の子にとってステータスでした。メイドさんはすごく流行っていたけど、まだお店が少なくて、かなり狭き門だったんです。「友達の紹介で秋葉原のメイドになれるの!?」と連れていかれた先が『アキバギルド』でした。

──思い描いていたメイドさんとは違ったんですね。
小林 そうなんです。仮に仕事が長く続かなかったとしても、可愛い衣装を着て、秋葉原でメイドさんとして働いていたというのは、話のネタになるなと思って(笑)。そんな軽い気持ちで働き始めたのがきっかけでした。

──そんな縁で入社した『アキバギルド』は、どんなお店でしたか。
小林 オーナーがもともとディーラーの方で、ゲームのルールやチップとカードの扱い方などをレクチャーしてくれました。お店で遊べるゲームは、ブラックジャック、バカラ、ルーレット、ポーカーがあって、順次できるようになった種目のテーブルに入る感じでした。

──当時のポーカースポットの状況を教えてください。
小林 私が知っている限りだと、都内には『アキバギルド』と『コーナーポケット』というお店しかなかったと思います。『アキバギルド』もいまみたいに全然流行ってなくて、私が勤め始めたときにビラ配りだけして終わる日もあったくらいです。なので、こんなにポーカーをプレイする人が増えるなんて思わなかったですね。10年前の自分に「ポーカーめっちゃ流行ってるよ!」と言っても「そんなわけないじゃん」って流すと思います(笑)。

ポーカーの魅力と楽しみ方

──プレイヤーとして遊び始めた経緯を教えてください。
小林 『アキバギルド』で働き始めてから、お休みの日にフラっとお店へ行って遊ぶくらいはあったんですけど、大会に出て優勝したいとか、そういった気持ちは全然ありませんでした。働き始めてから2年ほどが経ったときに、マカオで「レッドドラゴン」という大会がスタートしました。そこに『アキバギルド』のお客様が何人か参加していて、オーナーから「旅費は出すから、お客様の応援を兼ねて、写真を撮ったり、インタビューしてきてほしい」と頼まれてマカオに行きました。海外でプレイする姿がメディアに載ることで、「海外に行ってみたい」というファンを増やしたいというオーナーの想いがあったようです。私はそこで初めて、日本人と外国人のポーカープロが大会に出ているのを見て、「これで生活している人って本当にいるんだ」と驚きましたね。そこから「ポーカーを勉強するのって、もしかしたら面白いのかもしれない」と思うようになり、興味が湧きました。

──ポーカーのどんなところに魅力を感じましたか。
小林 戦えるように勉強し始めたものの、奥が深すぎて奥まで全然届かないんですよ。でも、今日始めた初心者が優勝してしまうこともある。そこが面白いところで、プロとか長年やっているプレイヤーに長期的に勝つことは確率的に低いし、難しいんですけど、短期的には勝てるときもあるみたいな。誰にでもチャンスがあるというところが最大の魅力なんじゃないかなと思いますね。

──プロにも勝てる可能性がある戦いってなかなかないですよね。
小林 初心者とプロ級の人が戦っても、普通はまともな勝負にならないじゃないですか。でもポーカーは、初心者でも状況がかみ合えばプロと互角に戦えて、ハラハラできる面白いゲームだと思います。私が日本や海外のプロに勝つことだってできます。ただ勉強することは尽きないですね。強くなりたいという欲がある人は熱中できるし、考えてきた戦略を実践で試して、うまくいったときの喜びも魅力の一つです。

──どんなときにポーカーをプレイしたくなりますか。
小林 うまい人のプレイを見た後ですね。以前、国内の有名なプロが一斉に集まったトーナメントの実況をさせていただいたのですが、あの戦いを見てすごく刺激を受けました。実況しながら「このくらいの強さで相手のオールイン受けていいんだ」と思ったり、隣でプロの解説の方が「ポットのオッズが〇%あるから、勝率〇%だったらコールしないと損なんだよ」と教えてくれるので勉強になりました。初めて優勝した海外のトーナメントでは、うまい人のプレイを参考にして、いつもだったら降りてるハンドをコールしたり、ブラフしてポットを取ったりとか、プレイがうまくハマりました。自分なりに「これは、この前に見たあのプレイが使えるんじゃないかな」というのを使ってみて、うまくいったときにはめちゃめちゃ脳汁出ますね(笑)。

──ディーラー経験はプレイにどんな利点がありますか。
小林 ベットの金額とかはすごい参考になりますね。ディーラーを始めた頃は、プリフロップのオープンレイズ額は3BBが鉄板だったのですが、今はそれよりも安い。そうした最新の戦略、今一番メジャーな戦略を肌で感じられます。ディーラーをやっていると1年間で数千パターンのハンドを見ます。ボードがこういうときにこれくらい打って、こっちの人をフォールドさせて、みたいな流れを見ながら勉強できるのも利点ですね。

──戦略は時代によって変わるものなんですね。
小林 昔と今では全然違うと思います。一昔前はどこのポジションにいてもレイズは3BBで固定しないとハンドがバレるという考え方でした。ですが今は、ポジションが早いところからレイズするときは安くとか、ボタンからレイズするときは大きく4BBとか、ポジションによって変えているプレイヤーも多くなってきました。今情報を発信している、うまい人たちの考え方がそうなので、その情報をキャッチして実践する人が多くなっているんだと思います。10年前の戦略だけでプレイしていると、今のフィールドにはマッチしないんじゃないかと思います。


肌で感じてきたポーカー人気

──ディーラーを始めた約10年前から現在までに、ポーカーに関する心境の変化はありましたか。
小林 正直めちゃくちゃ不安を抱えています(笑)。ポーカースポットが都内にすごく増えたじゃないですか。私タピオカが好きなんですけど、タピオカ屋さんって一気にできて一気になくなりましたよね。なんか流行りすぎて、なくならないか心配で。ブームで終わってほしくない。まだ、リバーで「まくられないでくれ!」というお祈り状態ですね(笑)。

──いつ頃からポーカー人気を感じていましたか。
小林 ポーカースポットは6~7年くらい前からポツポツと増え出して、YouTuberの「世界のヨコサワ」さんの動画が流行り始めた3年ほど前から爆発的に増えた印象です。

──現在、都内だけで100店舗以上あるそうですね。
小林 まさかこんなにできると思っていませんでした。だって最初は2店舗ですよ(笑)。確かに増え始めましたが、減っている印象は全くありません。むしろ、「またポーカースポットが増えてる」というイメージなので、まだまだブームは続いてくれていると思っています。

老若男女 楽しめるのがポーカー

──一昔前と比べて、客層は変わりましたか。
小林 ポーカーをプレイするYouTuberや芸能人のファンで始めたという女性のお客様が増えました。女の子同士で来る方も増えたのは、女性として嬉しいです。また、ある番組の企画で女性のポーカートーナメントが開催されていて、タレントやグラビアアイドルの女性プレイヤーが増えました。そのトーナメントに出場したいという芸能関係の子も多いです。

──そんな女性プレイヤーにはどんな印象をお持ちですか。
小林 めちゃくちゃ勉強している人が多いですね。芸能を仕事にしている人は努力家が多い。ポーカー初心者と思ってなめてかかると痛い目をみますね。日々の努力がないと、タレントさんってお仕事をもらえなかったりするわけですから、やっぱり芸事やっている人は肝が据わってます。ただのキラキラ女子じゃないんですよ。自分が前に出るという気持ちで、それがプレイにも乗ってくるので、相手にするとかなり脅威ですね。

──対戦相手ごとに戦略は変わってくるものですか。
小林 例えば60歳の男性プレイヤーと私だと、見た目が違うので、周囲の相手から見た第一印象も違うじゃないですか。それを自分で理解して、プレイに落とし込むことが大事です。例えば「女の子だし打てば降りそうと思われてるな」と感じたら、キャッチしに行ったり。自分の見た目とか、テーブルでの立場みたいなものをプレイに反映させていくのも、ポーカーの面白さかなと思います。

ポーカースポットは地域コミュニティの一つ

──ポーカースポットの役割はどんなところだと思いますか。
小林 ポーカーって誰とやっても楽しいんです。いつ行っても誰か仲間がいて、ポーカー以外の話もできるようなコミュニティがお店にできると、行くのがもっと楽しみになりますよね。そういった意味では、パチンコホールさんも似ているかもしれません。

──コミュニティに集まる人はどんな人が多いですか。
小林 お話が好きな人は仲の良い人と喋るのが楽しいという理由で来店されますし、お店によってはボトルキープできるお店があるので、自分のボトルを入れてゆっくり飲みながらポーカーするのが楽しいという人もいます。純粋にポーカーが好きという人もいますけど、ハンドを降りた後って暇じゃないですか。その時に居心地が悪いお店は嫌だから、居心地のいいお店を探すようになります。

──ディーラーとして再来店につなげるために取り組んでいることはありますか。
小林 ディーラーをしているときはゲームに集中してもらえるような雰囲気づくりを心がけています。多少は盛り上げたりすることも必要ですが、ゲームに支障の出ない程度です。それは実況しているときもそうです。主役はプレイヤーのプレイであって、解説はプロの方がしてくれます。私は状況を分かりやすくしたり、面白いプレイがあったときに「今のはどういう意図があったんですか」ということを聞くようにしています。どちらにしても純粋にゲームを楽しんでもらいたいという想いが強いですね。

──プレイヤーとディーラー、両方の顔を持つ人として今後の目標を教えてください。
小林 ここ2~3年で海外のトーナメントに初参加したという人がすごく増えてきたと感じます。YouTubeを見て始めた世代の方々も、これからどんどん海外を目指してプレイしてほしいです。世界から見て「日本はポーカーが流行っている国だし、強いプレイヤーがいっぱいいる」というのが、どんどん認知されていくと嬉しいですね。今後も出られる限りはトーナメントに出場したいですが、基本はやっぱりディーラーや実況者として、裏方でポーカー界を盛り上げていけたらいいなと思います」


こばやし・みやひ
3月1日生まれ、横浜市出身。ディーラーで生計を立てる傍ら、ポーカーイベントのMC・実況者としても活躍する。声優養成所時代にディーラーデビュー。ポーカーと出会う。韓国・仁川で22年12月に行われた全日本ポーカー選手権のサイドイベントで優勝。500万ウォンを手にする。尊敬するプレイヤーは木原直哉プロ。声優ダンスユニット「音戯小町(おとぎこまち)」では、艶のある日本舞踊を取り入れたダンスを披露する。イメージカラーの紫は、日本舞踊の演目「藤娘」から。

※『月刊アミューズメントジャパン』2023年4月号に掲載した記事を転載しました


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