特集記事

特集記事内を

2023年02月09日
No.10003280

[特集]2023年 業界の課題
業界はキャッシュレス化を進めるべきなのか?
進むも地獄 とどまるも地獄

業界はキャッシュレス化を進めるべきなのか?

給与をデジタルマネーで受け取れる制度が2023年4月にも解禁される。決済アプリの口座に直接給与が入れば、ますます現金を使わない生活へと移行し、「パチンコをしようと思ったが手持ち現金がない」ことによる機会損失が増えそうだ。

経済産業省はキャッシュレス決済比率を2025年までに40%、将来的には世界最高水準の80%を目指している。2019年から実施された国によるキャッシュレス推進のためのポイント還元キャンペーンの成果もあってか、2021年のキャッシュレス決済比率は前年より2.8ポイント増加して32.5%になった。

「キャッシュレス決済」と聞いて、どの支払方法を想起するかは人それぞれだろうが、概ね、クレジットカード決済、デビットカード決済、電子マネー(プリペイドカード)決済、コード決済に大別される。金額ベースで最も多く決済に使われているのがクレジットカードで、決済額の27.7%を占める(2021年)。クレジットカードと同じ国際ブランド(VISAやマスターカード)が付いているが、「与信なし」「即時払い」のデビットカードの決済比率は、まだ0.92%にとどまるものの2019年比では0.36ポイント増えた。コード決済は2019年比で1.49ポイント増え決済比率は1.8%。電子マネーの決済比率はコード決済比率を上回る2.0%だが、2019年比では0.1ポイントしか増えていない。

マクロミルは同社のサービスMHS(個人支出調査サービス)を使って2019年11月から2021年11月までの2年間において、キャッシュレス決済の利用状況を性年代別・業態別・支払金額の規模の視点から比較調査している。それによると、現金による決済回数の割合は、2019年11月時点では48%を占めていたが、2021年11月時点では38%まで減少。一方でスマホ決済の回数は、同期間において8%から2倍の16%へ増加した。コード決済は主として少額決済に使われているため決済額ベースで見たときに比率が低いが、利用頻度は大きく増加したのだ。



決済状況を性年代別に見ると、現金決済の回数割合が減りスマホ決済の回数割合が増えたのはすべての性・年代に共通する。だがクレジットカード決済の回数割合は20代男性のみが減り、他の性・年代は微増した。マクロミルのレポートは、男性20代以下だけがクレジットカード決済の利用割合が減った要因として、「財布を持たずスマホだけをもって外出する人が増えてきたことが考えられる」としている。これが若年層男性のライフスタイルだ。

20代に限らず、スマホ決済の利用頻度が増えたことで、財布を持たずに外出することが増えた人は多いのではないか。ときには意図せず(忘れて)財布を持たずに家を出てしまうこともあるだろう。しかしスマホさえあれば困ることはあまりない。

キャッシュレス決済だから実現できた利便性向上の身近な例として、マクドナルドが2020年に全国導入した「モバイルオーダー」を紹介しよう。店内で食事する場合、従来は、①席を確保し、②カウンターに行って注文・支払いし、③カウンターで商品を受け取り、④自席に戻る、だった。しかしモバイルオーダーを使えば、①入店して着席、②席からスマホで注文・支払いし待つ、③運ばれてくる商品を席で受け取る、となる。細かな話だが、マクドナルドのカウンターでの支払いは現在PayPayに対応していない。しかし、モバイルオーダー利用の場合はPayPayを利用できる。
 
公営ギャンブルの売上 約9割はキャッシュレス

公営競技の売上に占める電話・インターネット投票の割合は9割近くであることから、売上のおおむね9割がキャッシュレスだと言える。
公営ギャンブル4種目の中で2021年に最も売上を伸ばした競輪では、投票券の売上高は中央競馬や地方競馬、ボートレースの後塵を拝しているものの、2021年には前年比で35.1%も増えた。インターネット投票の伸長に大きく寄与しているのがサイバーエージェント、楽天グループ、MIXIといった老舗IT企業だ。

公営競技において初めてスマホ決済サービスを導入した『WinTicket』を運営するWinTicket社はサイバーエージェントの子会社。全国43競輪場の投票券をパソコンやスマホで購入できる本サービスでは、いったん投票資金(ポイント)を購入(チャージ)する。購入には、スマホ決済(PayPay、LINE Pay、メルペイ)のほかクレジットカード決済(VISA、Mastercard、JCB)、キャリア決済(au)、銀行、Apple Payなどが対応している。

競輪車券販売サイト『Kドリームス』(運営するケイドリームスは楽天の完全子会社)では、「DERUCA(デルカ)」という名の独自電子マネーのチャージに、コンビニ支払いのほか、銀行口座、クレジットカード、キャリア決済、スマホ決済(PayPay)、電子マネー(BitCash、JCB PREMO)と多彩な手段に対応している。

競輪・PIST6・オートレースのネット投票サイト『TIPSTAR』(運営はMIXI)で利用する「TIPマネー」へのチャージも、銀行口座、クレジットカード、スマホ決済、Pay‐easyに対応している。〔続く〕

※本記事の全文は月刊アミューズメントジャパン2023年1月号に掲載しています。


パチンコ・パチスロ最新記事