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2022年06月27日
No.10002894

「パチンコはギャンブル」維新の会の真意とは
大阪市議会 意見書可決の背景

「パチンコはギャンブル」維新の会の真意とは
大阪市ではIR導入プロセスの進行とともに反対派の声も大きくなっている

大阪市議会が5月25日に可決した、パチンコ・パチスロを「ギャンブル」と位置付けたうえで依存症防止対策の促進を政府に求める意見書が波紋を呼んでいる。大遊協と日遊協は素早く対応し、大阪市に業界の現状への理解を求めた。では、市議会への意見書提出にはどのような背景があったのだろうか。

大阪市議会がこの意見書を可決した翌日、多くの新聞が「パチンコも賭博に」「パチンコはギャンブル」等の見出しを付けて報じた。意見書の正式名称は、「パチンコ、パチスロ等をギャンブルに位置づけ、ギャンブル等依存症防止のための適切な対策を促進させることを求める意見書」で、「パチンコ・パチスロ・ネットカジノ・オンラインカジノ等については依存症患者も多く、カジノ事業との整合性の観点から、国の適正な指導・管理のもとに運営されるよう法整備を行うこと」を国に要望する内容。最大会派の大阪維新の会と公明党が共同提出し、全会一致で可決した。

意見書の中で「山口県阿武町の事例にもあるように、ネットカジノに対しても様々な懸念が挙げられている」と言及していることから、誤送金問題に端を発しオンラインカジノの存在がクローズアップされたことを受けて、急ごしらえで作られたもののような印象を受ける。また、ギャンブル等依存症対策推進基本計画に則って対策に取り組んできたパチンコ・パチスロが、利用実態がほとんど分かっていないうえに国内では違法なオンラインカジノと同列に扱われているなど、遊技業界にとっては現状認識にも疑問符を付けざるを得ない内容だ。

この意見書の決議を受け、大阪府遊技業協同組合は5月30日付けで大阪市議会長の大橋一隆議員宛てに陳情書を送付。陳情書では警察庁がパチンコ・パチスロ営業をギャンブルとして扱っていないこと、社会貢献活動等が評価され府知事をはじめ各所から感謝状を受け取っていることなどを説明し、適切な評価の取り扱いを求めた。

日本遊技関連事業協会は6月3日付けで日遊協近畿支部と連名で松井一郎市長宛に「パチンコ業界の依存問題対策へのご理解と定期報告のお願い」と題した文書を送付。15日には増田光均近畿支部長らが市健康局を訪問し、業界の取り組みなどを説明した。

では大阪市議会への意見書はどのような背景で提出されたのか。遊技業界では「IRを推進している大阪では反対運動が大きくなっている。その目を逸らすためにパチンコがスケープゴートにされた」と見る向きもある。

業界を締め付ける
意図ではない?


しかし、意見書を提出した大阪維新の会の藤田あきら市議は、「誤送金問題でオンラインカジノに注目が集まったからでも、IRを推進したいからパチンコ業界を悪役に仕立て上げたものでもない。タイミング的にそう解釈されるのも理解できるが、意見書は2月末ごろから準備していたもの。そもそもパチンコ・パチスロを『賭博と位置付ける』ことは、日本維新の会がかねてより掲げている政策提言のひとつ」だと言う。

日本維新の会の2021年版の政策提言には、「パチンコは遊戯ではなくギャンブルとして位置づけ課税することも視野に、パチンコ産業の健全化に向けた法整備を行います」とある。2022年版では表現が修正され、「パチンコ・パチスロ等のギャンブル等関連事業についても、遊戯ではなく賭博と位置づけ、事業者の事業の実施の方法や責務を明確化するとともに、国や地方自治体による課税や広告の規制なども含めた適正な管理のもとに運用されるよう法整備を行います」となっている。

意見書を提出した藤田あきら議員


「意見書の原案は『ギャンブル』ではなく『賭博』でしたが、他会派から『賭博』と位置付けるには法律を変える必要がありハードルが高くなる、という意見があったため修正したものです。意味は同じだと私は理解しています。誤解していただきたくないのですが、パチンコを禁止しようという趣旨ではありません。パチンコ業界の社会貢献も依存対策の取り組みも存じています。三店方式が違法だと言うつもりもありません。ただ、パチンコで獲得した賞品のほぼすべてが隣接する買取所でお金に換えられている現状を踏まえ、『民営ギャンブルである』と正面切って認め、その前提に立った依存対策を推進していただきたいという国への要望です」(藤田議員)

ギャンブル等依存症対策推進基本計画ではパチンコ業界は大別して5つの領域について対策を推進している。藤田議員の目には、どういった面の対策の強化が課題と映っているのだろうか。

「あくまで私見ですが、まずはアクセス制限、特に家族申告プログラムです。この導入店舗数を増やし実効性を高める必要があるように思います。『申告プログラムで設定した限度に達したら会員カードを抜く、他の店舗に行く』などによって遊技状況を捕捉できなくなるのであれば、共通カードのような仕組みを作れないか。その場合に全ての費用を業界が負担するのではなく、行政が間に入ったほうがいいこともあるかもしれない。真正面からそういう議論を始めていただきたい、ということなのです」(藤田議員)

日本維新の会の大阪支部でもある大阪維新の会は、政策提言の一歩としてまず大阪市議会にこの意見書を提出した。今後、他の自治体でも同様の意見書を提出していく考えだという。


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