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2021年10月20日
No.10002505

緊急対談
廃棄台大量排出!? 2月危機をどう乗り越えるか
使用済み旧規則機の適正処理へ

廃棄台大量排出!? 2月危機をどう乗り越えるか

東日本遊技機商業協同組合
中村昌勇 理事長
Nakamura Yoshio

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株式会社ユーコーリプロ
金海基浩 常務取締役
Kaneumi Motohiro


旧規則機撤去期限の2022年1月末まで残り3カ月余り。しかし、ホールやホールの倉庫、運送会社の倉庫などにはいまだに大量の旧規則機が存在し、その排出は必ずしも順調に進んでいない。そのため、撤去期限後の2月に大量の使用済み遊技機が発生する可能性が極めて高くなってきた。廃棄台の不法投棄が社会問題化した過去の教訓から業界は何を学ぶべきか。危機感を強める東日本遊技機商業協同組合の中村昌勇理事長と、処理会社大手ユーコーリプロの金海基浩常務取締役が世代を超えて話し合った。(本文敬称略)


金海 中村理事長には、2018年の規則改正で旧規則機の撤去が決まった後、廃棄台処理の問題で最初にご相談させていただきました。過去の野積み問題を踏まえ、今後に向けたヒントやアドバイスをいただき、とても参考になりました。

中村 廃棄台の問題は、業界が社会に対してどう責任を負うかという問題として考えなければいけないんですよね。

金海 中村理事長は全商協の会長も務められていますが、かつての廃棄台問題に携わったのが主に東遊商さんということで、今日は東遊商の理事長として、廃棄台の適正処理に関する課題について改めて教えていただければと思います。

中村 まずは1994(平成6)年の廃棄台の野積み問題ですよね。埼玉県の寄居町で、大量に野積みされたパチンコ・パチスロが見つかったんです。廃棄台の山が塀を押して、児童が通る通学路にはみ出すほどになった様子がテレビのニュースや新聞などで報道されて、社会問題化したわけです。これに対応しなければいけないということで、まず埼玉県遊協から話があって、埼玉県遊協と全関東連、日工組、東遊商の4団体で対応に当たりました。最終的に4団体で撤去費用を分担して、約2年をかけて推定約5万台を撤去しました。

金海 その翌年(1995年)も栃木県で野積みが問題になりました。

中村 栃木県の鹿沼市と宇都宮市ですね。でも寄居町と栃木では少し違っていた。栃木で野積みされた遊技機は、主に中国に輸出するために集められた使用済み遊技機だったんです。それが年月の経過とともに売却・輸出が不可能になったのが実態だった。ですから、廃棄に出しているホールさんは、どこでどう処理されているかをわかっていないので、ホールさんを責めようがない。運送業者に問題があった状況でした。

金海 当時はそういう運送業者さんが多かったんですか?

中村 ある意味で、まだリサイクルとか適正処理という認識がなかったんだと思います。そのときは、日工組が主体となって業界7団体で遊技機リサイクル検討委員会を立ち上げるなど、廃棄物処理のルールを決めていき、一方で栃木県との交渉にあたりました。ただ、普通の遊技機であれば問題ないのですが、野積みされている遊技機なので、もう泥のようにぐしゃぐしゃな状態で、これを片付けるのは大変な作業になるだろうと。そこで手を挙げてくれたのがユーコーリプロさんだったんです。最終的には問題発覚から6年後の2002年に、鹿沼と宇都宮の廃棄台合わせて推定約21万台の撤去が完了したんです。

金海 そういうことだったんですね。

中村 当時は遊技機を破砕して埋めてしまうという処理方法が横行していて、リサイクルという概念がなかった。そのなかでユーコーリプロさんがリサイクルという方向でどんどん処理を始めていたんです。廃棄台の処理にあたって関東の処理会社数社に処理を打診しましたが、選んだところはみんな破砕・埋め立て。それが問題になりはじめて、リサイクルという言葉が出てきて、一番きちんと作業ができる処理会社としてユーコーリプロさんに処理をお願いしたんです。

金海 当社グループ会長から「昔はリサイクル屋と言われていた」と聞いていましたが、その意味がやっとわかりました(笑)。

中村 東遊商は寄居、鹿沼、宇都宮と、野積み廃棄台の処理を合計3回やりました。つまり3回も苦い経験をしているわけです。2001年に鹿沼と宇都宮の野積み問題の実態調査をしたところ、鹿沼で有価物として収集・保管を行っていた業者に廃棄台を渡したことがあった組合員は、141社中わずか3社でした。それでも中古となると東遊商に責任があるので、処理にあたって相応の分担金を負担しました。そうした経験が伝わっているから、東遊商は廃棄台の問題に対する危機感がものすごく強いのです。

社会問題化した寄居町で野積みされた大量の廃棄台

処理作業は難航を極めた 写真提供:東日本遊技機商業協同組合


金海 中村理事長は今回の旧規則機の撤去で何が課題だと思われていますか?

中村 今回とくに危惧しているのは、ホールさんが多額の費用を負担しなければならなくなる恐れがあることです。それが保管です。仮に撤去期限後に処理会社が処理できないほど多台数の使用済み遊技機が排出された場合、処理会社がすべてを即座に受け入れることは不可能です。そうなるとホールさんは、使用できなくなった遊技機をどこかに保管しなければならず、保管料がかかります。倉庫に保管できずに、自社の土地に使用済み遊技機を積み上げるようなことになれば、外から見て問題視される可能性もあります。そこを危惧しているわけです。

東遊商 中村昌勇理事長

金海 まさにそこなんです。8月末時点で全国の新規則機の設置割合はパチンコ・パチスロを合わせて約69・7%。つまりまだ約30%の旧規則機がホールに設置されている状況です。この問題ではよく新規則機の設置比率の数字で達成率が話題になりますが、私は旧規則機の残数を台数で語ってほしいと思っています。なぜなら、旧規則機が30%残っているということは、台数で言うと約118万台。この数字は重みがありませんか? パーセントで語ると、仮に80%を超えれば「まあ行けるだろう」という雰囲気になってしまいそうですが、台数で語ると「まだこんなにあるの?」と危機感を持っていただけると思うんです。

中村 もっと言えば、機種ごとに落とし込んで話をする必要があるんじゃないかな。検定切れの期日は都道府県ごとに若干異なるから、県ごと、機種ごとに設置期限が切れる機種とその台数を明確にしていくとわかりやすくなりますよね。東遊商の広報誌では毎月、「旧規則ぱちんこ遊技機の下取、買取状況」を掲載しているし、東遊商管内の都県別に機種別の検定期間満了日も掲載しています。組合員販社のみなさんが、ホールさんに伺った際に、それをきちんと説明することが販社の仕事ですから。

金海 おっしゃる通りですね。実感できる台数で情報を共有する必要があると思います。一方で、先ほど中村理事長がおっしゃってくださった保管の問題があります。9月に全日遊連が公表した「遊技機の保管状況調査結果」では、今年5月末時点で自社倉庫、販売商社(全商協・回胴遊商加盟)、運送業者、その他(処理業者・運送業者等)に保管されている遊技機は139万3662台でした。そのうちの約41万台がすでに認定・検定切れの遊技機。約98万台がこの調査以降に認定・検定が切れる遊技機か、新規則機です。これら保管されている使用済み遊技機のほかに、8月末の時点でホールに設置されていた旧規則機はパチンコが約54万4000台、パチスロが約63万5000台で合計約117万9000台もありました。撤去期限まであと3カ月余り。これらの使用済み遊技機が一斉に排出されても、処理会社がすべてを受け入れることは不可能です。

ユーコーリプロ 金海基浩常務取締役

中村 排出者がどれだけ意識してきちんと排出していただけるか。そのための情報をメーカーさんや販社がきちんと提供できるか。下取り・買取りができる機械、できない機械をきちんと伝えてホールさんに対応していただく。これがそれぞれの立場で果たすべき責任だと思います。

金海 パチンコの旧規則機の撤去は比較的進んでいる印象がありますが、パチスロはパチンコよりも設置台数がおよそ3分の2と少ないにもかかわらず、旧規則機の残数ではパチンコを上回っています。先ほども言いましたが、8月末現在の残数はパチンコ約54万4000台、パチスロ約63万5000台、あわせて約118万台という状況です。こうした現実を踏まえると、来年1月31日の撤去期限後に大量の廃棄台が出てくることが予想されます。そのときに備える意味でも不要台を早期に排出していただき、また自社の保管スペースがいまどういう状況になっているのかについて、ぜひ確認をお願いしたいと思います。当社としては、保管場所を散らしたり、時期をずらしたりしながら、どうやって受け入れていくかが今後の課題です。これは処理会社共通の課題だと思います。

中村 設置されている旧規則機に加えて、来年1月末までに倉庫に保管している再設置できない遊技機をどんどん排出していかなくてはならない。そのためにはメーカーさん、ホールさん、販社のそれぞれが責任を果たさないと、またかつてと同じような事故が起きてしまう。それをいま訴えているんです。そのなかでも九州では独自に業界5団体が「九州回収システム」を立ち上げて、進んでいますよね。

金海 昨年11月に「九州回収システム」を立ち上げる1年前ぐらいから、日遊協の樋口益次郎副会長からご提案があって、話し合いをしていました。九州はまとまりが強いので、ホールさんとしても、旧規則機が外せないのであれば、1月31日に旧規則機を外したときに処理会社に迷惑をかけないようにと、倉庫を空けようとしてくださっています。また樋口副会長が、日遊協加盟のホールだけでも11月までに8000台排出しようと呼びかけてくださっていることも心強いかぎりです。ただ、大量の旧規則機が外れるのは来年1月末。2月以降への危機感は他の地域と変わりません。問題が先送りされている状況だという認識です。一方で、折からの半導体不足を受けて、現在、各メーカーさんがメーカー買取に力を入れています。当社のホームページに詳細が載っているので、ご存知でないホールさんは一度閲覧してもらえればと思います。

中村 ユーコーリプロさんは遊技機のリサイクルで業界最大手ですが、月間の処理能力はどのくらいなんですか?

金海 福岡、埼玉、愛知の3工場合わせて、マックス稼働で10万台弱です。1月末に大量に持ち込まれても、当社だけではなく運送会社も含めて、すべての廃棄台を受けられないと思います。当然、運送会社は新台も運ばなくてはいけないので、そちらにもトラックと保管場所が割かれますから、廃棄に充てられるトラックと場所がかなり限られてくる。流通的にも無理があると思います。

中村 それまでに販社としてできることは、ホールさんにきちんと情報を提供していくこと。それは通常通りやっていきますが、さらに都道府県単位で各都府県方面組合さんにこちらから情報を提供していくことも必要だと思っています。

金海 当社はあくまでも廃棄台を受け入れる立場なので、こちらから何かをお願いできる立場ではありません。商業組合さんや全日遊連さんにご協力いただき、残り3カ月の間に少しでも多くの使用済み遊技機を排出していただければありがたいです。

中村 確かに、リサイクル業者さんがどんどん出ていくと、営業になってしまうからね(笑)。いまは営業より責任を果たすというところで、金海常務も一生懸命やられている。ホールさんも早期排出というところで責任を果たしていただいて、その後はリサイクル会社にしっかり対応していただく。それがあるべき姿じゃないですか。

金海 とにかく、業界の人たちすべてにこの問題について関心を持っていただければと思っています。

中村 これからの業界は金海常務の世代が担っていくんですから、早くこの問題を解決して、どんどん先に進んでください。ぼくらはそれを見て面白がっているだけで(笑)。ただ、あれやって、これやってと言われれば、そのサポートはしっかりやりますから。それがぼくらの役割。それでうまくいったら、「よかったよかった!」と。

金海 これからも見守っていただけたらと思います。今日はありがとうございました。



【参考資料】
廃棄台リサイクル問題とその取り組み
1994~2002年

資料提供:東日本遊技機商業協同組合

1994年11月
日工組、東遊商、全関東連、埼玉県遊協の4団体が埼玉県寄居町の住宅地に野積みされた廃棄台推定約5万台の緊急撤去作業開始

1995年2月
栃木県鹿沼市内の廃棄台野積み現場を視察

1997年3月
九州遊商が全商協8単組のトップを切り、「広域再生利用指定産業廃棄物処理者」の指定を受ける。
他の7地区遊商は平成11年(1999年)6月に厚生省から指定を受け、処理地域が全国に拡大

1997年6月
業界7団体による遊技機リサイクル検討委員会が発足

1997年11月
遊技機等廃棄処理確認伝票(マニフェスト制)を導入

1998年4月
廃棄台の適正処理に係る搬送事業者説明会を開催
廃棄台を搬送する運送業者を組合登録制とし認可証明を発行

1999年10月
東遊商に登録する運送業者34社が「遊技機運送事業協力会」を設立、流通セキュリティーの強化を図る。(遊技機運送事業協同組合の前身となる)

2001年5月
栃木県鹿沼市と宇都宮市の野積み問題について実態調査。日建工業が関わるものとして、鹿沼市は15万台、宇都宮市には10万台。鹿沼市の廃棄台は有価物として収集、保管してきたが、年月の経過とともに売却・輸出が不可能な状況になったとのこと。宇都宮市の廃棄台は有償取引していたと主張。回答組合員141社のうち日建工業に廃棄台を渡したことがある販社は3社、野積み廃棄台の調査の結果、自社の取扱いがないという自信がある組合員136社、「ない」が5社

2001年8月
栃木県鹿沼市・宇都宮市に野積みされた廃棄パチンコ台の撤去を日工組・東遊商が行うこととなり栃木県に申し入れ

2001年10月
栃木県合同庁舎で日遊協、日工組、東遊商と行政担当者との打ち合わせが行われる。パチンコ業界団体と受託業者で廃棄物処理法に基づく契約を交わす。パチンコ業界と県産廃協会とで支払い事務に関する文書を取り交わす。産廃協会でマニフェストの発行・管理を受託。日建工業から誓約書を徴収

2001年11月
栃木県鹿沼市の廃棄台の処理がスタート

2002年5月
栃木県鹿沼市の野積み廃棄台問題で、約15万台の廃棄台の撤去が完了

鹿沼の廃棄台問題をめぐり15万台に及び廃棄台の撤去に当たった日工組、東遊商と業界のリサイクル関係の意思決定機関である遊技機リサイクル推進委員会に対し、栃木県と同県鹿沼市が感謝状を授与

2002年7月
日工組、東遊商主導による栃木県宇都宮市の野積み廃棄台の撤去が完了。問題発覚から6年、同県鹿沼市と合わせて約21万台が撤去された


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