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2021年09月06日
No.10002450

緊急寄稿/ホールスタッフ意識調査
消極派3割 ホールスタッフのワクチン接種意向
接種促進のために企業に求められる対応とは

消極派3割 ホールスタッフのワクチン接種意向

ホール向けの人材研修を手掛けるミチスケジャパンが今年7月末にパチンコホールで働くスタッフを対象に新型コロナワクチンの接種に関する意識調査を行った結果、回答者全体で約3割が接種に消極的な意向を示した。同社の永澤有希代表の緊急寄稿を掲載します。

文=永澤有希(ミチスケジャパン)

ミチスケジャパンでは7月末、ホールスタッフを対象とした「コロナワクチン意識調査」を実施し、北海道から九州まで全国さまざまな地域と年代のホールスタッフ男女172人から回答をいただきました。

回答者全体の接種意向は、積極的に打ちたい(28%)と、やや打ちたい(18%)を合わせた接種に積極的な回答が46%、あまり打ちたくない(23%)と、絶対に打ちたくない(8%)を合わせた接種に消極的な回答が31%、どちらとも言えないが23%でした。


男女別に見ると、男性は積極派が59%、消極派が18%だったのに対して、女性は積極派が32%、消極派が45%と、消極派が積極派を上回り、女性は男性に比べてワクチン接種にやや慎重な姿勢がうかがえました。



年代別に見ると、積極派は10代~30代で約4割と少なく、40代~50代は7割以上と高い傾向がみられました。そのうち「絶対に打ちたくない」と回答した割合は30代が4%、40代以上が6%だったのに対して、20代以下の若年層は13%と突出して多い結果でした。ホール法人にとって、若年層のスタッフにワクチンを打ちやすい環境を提供することが、改めて大きな課題として浮かび上がりました。




予防接種法では努力義務
接種の強要は許されない


このアンケート調査は、あるホール企業の20代の女性スタッフから「コロナワクチンは絶対に打ちたくないです!」と相談されたことがきっかけで行ったものです。この女性スタッフは、店舗の女性上司から「(ワクチン接種に)拒否権はありません」と言われたそうです。私が本部に確認したところ、当然ですが「会社としてワクチン接種を強制した事実はない」とのことでした。

「拒否権はない」と言ってしまった女性上司の気持ちはとても良く分かります。おそらく、この女性上司は「会社は、スタッフ全員がコロナワクチンを接種するのが望ましいと思っているに違いない」と忖度し、ご本人も感染の怖さを感じていたから発言したのでしょう。

そこで、ベンチャーサポート法律事務所代表の川﨑公司弁護士に、法的な立場で会社側が意識しなければならないことを聞いてみました。

「予防接種法という法律がありますが、これはあくまでも『努めなければならない』という努力義務。強制ではなく、ご本人が納得した上で接種を判断していただくことになります。接種の強要や、打たない人を非難したり、職場等においてイジメや差別をしたりすることは、決して許されることではありません」

私もつい最近まで「コロナワクチンなんて絶対にイヤ」と思っていました。しかしワクチン接種が進んでいる海外の事情を調べたり、知人の医療従事者の方々が今年の春先からワクチン接種を始めて通常通り生活しているのを見たりしているうちに考えが変わり、「早く打ちたい」と思うようになりました。

今回の調査では、接種意向の理由も尋ねました。そのなかで「積極的に打ちたい」と答えた方のなかには「自由な移動(旅行や帰省)がしたいから」という理由が複数みられました。私も毎年訪れていた韓国やグアムに行けないことがストレスになっています。

早い段階からワクチンの接種が進んでいたフランスでは、新型コロナに感染して集中治療室(ICU)に入った人の接種者と非接種者の割合を公表しています。それによると8月現在で、ICUに入っている人の割合はワクチン非接種者が9人に対し、接種者が0・7人。ワクチン接種による効果を明確に数字で示し、ワクチンの有効性を国民に訴えています。


感染しても重症化を防ぎ
生命の危険性や後遺症を軽減


そこで、ワクチンの効果について改めて城之内医院(茨城県)の城之内宏至院長に聞いてみました。城之内院長がワクチン接種の効果として挙げるのは①感染予防、②発病予防、③集団免疫の3つの効果です。

「ワクチンは感染症に対して免疫を付けたり、持っている免疫力をさらに高める目的で行うものです。免疫力を高めることで、仮に感染しても重症化を防ぎ、生命の危険性や後遺症を軽減することにつながります。もちろん感染の確率を下げる効果も期待できます」

城之内先生も、ワクチン接種において絶対の安全性は約束できないとしています。その上で「今回の新型コロナウイルスにおいてはワクチンを打たないより打つメリットが大きい人が大半になる」と言います。日本国内で接種後に亡くなった人がいるという報道やSNSへの書き込みも見られますが、他の疾患が原因と思われる方も含まれ、因果関係が証明された人は未だいないのが現状だそうです。

副反応に対する心配についてはこう説明してくれました。

「新型コロナワクチンはメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンを体内に入れることで身体の中に抗体が出来る仕組みで、このmRNAを壊さないためにポリエチレングリコールという添加物質なども含まれています。これが副反応の原因ではないかという指摘もあります。ただ、体質によって接種したくても出来ない人や、冷静に判断したうえで接種したくないという方もいるので、個人の判断は尊重されるべきです。高齢者の介護施設などでは、未接種の介護職員が入居者に敬遠されるなどの事例も出てきています。個人の事情や、家族や周囲の人の事情も考慮したうえで、接種の判断をすると良いでしょう」

よく、「ワクチンを打っても感染する」と話す人がいますが、予防医学指導士の資格を持っている私から申し上げると、ワクチンは効果が出るまでに日数を要します。ファイザーのワクチンを例に取ると、1回目は接種12日後から効果を現し2回目までの効果は52・4%、2回目の接種後は7日間以降に94・8%の効果があると言われています。ワクチンを打ってもコロナに感染する原因は、このようなことも関係していると思われます。

多様性社会を考える良い機会に
誰の意見も尊重されるべき


最近、私の友人が運営する保育園でクラスターが発生しました。子供たち十数人は陽性ではあるものの全員無症状で、そこから保育士さんに感染して発覚したそうです。園長である友人は毎日子供と触れ合っていましたが、早めにワクチン接種をしていた成果か、クラスター発生後にPCR検査を5回行っても陰性でした。

ただ、たくさんの嫌がらせの電話を受け、なかには意味不明で差別的な電話もあったそうです。コロナウイルスへの対応に追われて疲弊している方々に石を投げ付けるような行為は、絶対にするべきではありません。

今回、ホールスタッフの方々に協力していただいたアンケート結果を見て、「これこそ多様性ではないか」と感じました。ワクチンを打ちたい人も、打ちたくない人も、背景にはそれまでの生活や環境、生まれ付きの体質など、個々のパーソナリティが反映されています。ですから回答してくださった方のどの回答も等しく尊重されるべきです。

私はホール企業在籍時にスタッフからパワハラやセクハラの相談を多数受けたのをきっかけに、ライフワークとしてホールで働く女性スタッフを対象にハラスメントに関するアンケートをお願いしてきました。

2013年のアンケート開始時の問題はセクハラが圧倒的に多かったのですが、ここ数年はMeToo運動などの影響でセクハラは減少し、モラハラ(モラルハラスメント)が増加傾向にあります。モラハラとは「無視や人格否定など、言葉や態度による精神的な暴力」を指します。

モラハラをする側は気軽にしてしまうのですが、受けた側は心に深い傷を負って心身不調の原因にもなり、放置すれば企業に損害を与えます。ワクチンを接種した人に「この後が怖いよ」と言って不安を煽ったり、ワクチンを拒否する人に「なぜ打たないの?」と詰め寄ったりする方もお見受けします。それは個人の尊厳を否定することにあたると思います。コロナワクチンの接種を取り巻く問題は、個々人の意思を尊重し、個人の尊厳を考える良い機会だと感じました。

私のように「絶対に打ちたくない」と思っていた人が「積極的に打ちたい」と変わることもありますし、逆のパターンもあります。そのような変化も個の尊重として受け止めていただきたいのです。

休みがもらえるから打つ
打ちたいけど時間が取れない


本稿執筆の前日、私は初めてコロナワクチンを接種しました。接種直前は緊張で血圧低下を感じましたが、打ち手の女性が気配を察し「花柄のお洋服、綺麗ですね」と柔和に話しかけてくださったので、正直に「緊張しています」と伝えたところ、「深く深呼吸して下さいね~」と和ませてくれて、痛みを感じる間もなく終わりました。接種2日後の朝に接種部位に軽い筋肉痛を感じましたが、熱は36度5分と平熱です。「早く終わらせたい」という気持ちが強く、2回目の接種を副反応も含めて心待ちにしている自分がいます。

今回のアンケートでは、ワクチン接種に消極的なものの「休みがもらえるから打つ」という方もいらっしゃいました。逆に、「打ちたいけどシフト上、時間が取れない」という意見も目立ちました。すでにワクチン休暇を設けている企業もありますが、ワクチン接種を推進したい企業では、休暇制度の導入や、接種のための勤務時間中の外出を認めるなど、ワクチン接種の動機付けになる何かしらの措置が有効であると感じます。

対面調査では「休憩室で皆がマスクを外して大勢でしゃべるからこわい。ダブルワークしている大手のカフェでは休憩室に入るのは2人までなど厳しく制限している」という声もありました。感染力の強いデルタ株が猛威をふるういま、店舗ではスタッフの休憩室や喫煙室の感染予防対策も、ぜひ一度見直していただきたいと思います。


ながさわ・ゆき
株式会社ミチスケジャパン代表 
研修講師・人事コンサルタント。
コンサル企業・パチンコ企業を経て現職。パチンコ企業時代は社長室と人材開発課を兼務し採用教育を改革。メイクアーティスト・予防医学指導士の資格も持ち、経営者の立場とスタッフの立場をともに理解できるコンサルタントとして心の内外両面から企業を支える。


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