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2019年11月26日
No.10001461

オオキ建築事務所
建築で業界のブランディングを
大木啓幹氏が国際的建築賞を受賞

建築で業界のブランディングを

オオキ建築事務所の大木啓幹代表が設計したパチンコホール「MUSEUM」が、世界的な建築賞のひとつ「The Architecture Masterprize 2019」の商業施設賞を受賞した。世界の建築家が注目したのは世界的な建築デザインの潮流を踏まえた環境に配慮したデザインだった。「業界の未来にとって建築による業界全体のブランディングが欠かせない」と話す大木氏に受賞の意義を聞いた。


「The Architecture Masterprize」(アーキテクチャー・マスタープライズ=AMP)は世界的に権威のある建築賞として知られる。1985年以来、世界中で写真、デザイン、建築のキュレーションとプロモーションを行っているアメリカのFarmani Groupが主催。2019年は世界65カ国から3000を超える建築作品がエントリーされた。

受賞作品の「MUSEUM」

受賞作品の「MUSEUM」は、AMPの中でも花形と言われる商業建築賞30作品のうちのひとつに選ばれた。日本からも150以上の作品がエントリーしたとみられるが、受賞したのは大手建築設計会社である日本設計の作品「NIPPO JUNCTION」とオオキ建築事務所の「MUSEUM」の2作品だけだった。

グッゲンハイム美術館前で受賞盾を手にする大木代表

大木啓幹代表は10月14日、Farmani Group が所有するスペイン、ビルバオにあるグッゲンハイム美術館で行われた受賞式典に招かれ記念盾を受け取った。受賞作品は世界中の建築家に配布される「AMP Book of Architecture」に掲載されるという。

ビルバオは世界中から観光客が訪れるスペイン北部の町。なかでも有名なのがグッゲンハイム美術館だ。大木代表はこの美術館で行われた授賞式で、ご子息の大木崇稔取締役(34)とともに記念盾を受け取った。崇稔氏は慶應義塾大学工学部を卒業後、ミラノ工科大学大学院に留学、現在はスイスの大手設計会社OOSで活躍中。来年、アラブ首長国連邦のドバイで開催される「2020年ドバイ国際博覧会」におけるスイス館のパビリオンなどを手掛けている。

授賞式典の様子

今回AMPに作品をエントリーした理由について大木代表はこう話す。

「今年はAMPの記念の年で、グッゲンハイム美術館で記念式典があるということで、息子に促されてエントリーしました」

受賞作品の「MUSEUM」は、ここ数年の国際的な建築賞の潮流を踏まえて選定したという。シンプルで環境と調和した作品が選ばれる傾向にあるからだ。

「オーナーからすべてを任せていただいた作品で、海辺のアミューズメント施設として環境と調和している。地域におけるアミューズメント施設の存在価値を高める作品だと思って選びました」

受賞した背景についてはこう分析する。

「いま、建築デザインの世界的な潮流は、自然と共生していくことが評価される傾向にある。そういう意味では時代に合っていて、かつ建築として選ばれるだけの要素が満たされていたと受け止めています」

今回、大木代表が建築賞を受賞した意義は小さくない。日本の建築賞やコンペティションと違って、欧米の建築賞では賞を獲ったから仕事になるわけではない。プロの作品同士の戦いだから面白い。利害関係なしに、どんな人物の作品かを問わずに、作品の良し悪しだけで選考されるからだ。

かつてパチンコホールの建築で海外の賞を受賞した妹島和世さんは、それをきっかけに最近ではフランスのルーブル美術館の別館を手掛けるなど世界のトップ建築家として評価されている。

表彰式が行われたイタリア・ビルバオにあるグッゲンハイム美術館

パチンコホール建築はいま、大きな曲がり角に来ている。大木代表はこう指摘する。

「例えば、海外のカジノ施設は非常にブランディングにこだわっています。その結果、欧米ではカジノや競馬に行くことじたいが高貴なイメージを持たれ、カジノの経営者やマネージャーにはそれなりのステータスが備わっている。パチンコホールの建築が海外の賞を受賞することは、業界全体のブランディングという視点でみると今後に希望を見出すことができるのではないか」

その理由を、「建築には業界のブランドを再構築する力があるから」と言葉を強める。

「業界ではこれまで、もっぱらお店側の理由で建物が作られてきました。その結果、環境との調和や、それがもたらすブランディング効果に目を向けてこなかった。例えばシャネルやエルメスといった高級ブランドは、ブランドを維持するためにとてつもない投資をしているわけです。今回、当社がこうした賞をいただけたことで、改めて建物の持つブランド力に目を向けていただく機会になればと思っています。それぞれのお店が、その街のなかにあって、建築的にも評価される。そういうブランディングを業界全体でやっていけば、パチンコに対する世の中の人々のイメージが変わるはず。それこそが、将来の集客にとって必要なことなのではないでしょうか」



(写真左)
大木啓幹(おおき・ひろもと)
一級建築士
オオキ建築事務所 代表取締役

(写真右)
大木崇稔(おおき・たかとし)
オオキ建築事務所 取締役
2007 慶應義塾大学 理工学部卒
2010 ミラノ工科大学大学院
2010 建築学科修士課程修了
2011 Arata Isosaki & Andrea Maffei Associati(イタリア)
2013 E2A Architekten(スイス)
2016 OOS(スイス)


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