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2023年03月29日
No.10003367

パチンコ店特化型広告代理店のCEOが語る 「実戦! パチンコ店のWebマーケティング」⑯
「音声広告」はパチンコ店でどう活用できるのか?
文=梶川弘徳 シー・エフ・ワイ代表取締役

「音声広告」はパチンコ店でどう活用できるのか?
かじかわ・ひろのり 株式会社シー・エフ・ワイ 代表取締役CEO パチンコホール企業で営業部長として、営業戦略や組織マネジメントの責任者で活躍し、2009年33歳でCFYを設立。提案力が強みのパチンコ店特化型広告代理店として評価を集め、会社を成長させてきた。パチンコセミナー多数登壇。業界誌でも執筆活動中。着物のギネス世界記録ホルダーであり「きものではたらく社長」としてブログも配信中。

今回は、新たな広告媒体として注目される「音声広告」がパチンコ店でどのように活用できるのか、活用実例から見えてきた分析データをもとにパチンコ店の活用方法について解説します。

「音声広告」とは、音声メディアサービスへ出稿する広告を指し、主にラジオや音楽配信サービスの視聴者にリーチできる広告媒体です。SpotifyやVoicy、Clubhouseなどの音楽・ラジオ配信サービスが流行したことで、2020年前後から音声広告の市場は急速に拡大しており、25年には420億円規模になると予測されています。

コロナの影響によって在宅時間が増加し「ながら聴き」が増えたこと、スマホやワイヤレスイヤホンの発展によって「手軽さ」が向上したことなど、生活様式の変化によって「聴く」という環境が整ったことが主な要因として考えられます。

現在、音声メディアはさまざまなサービスが展開されていますが、パチンコ店の広告として利用価値の高いものは2つに絞られます。1つは、国内最大規模のインターネットラジオアプリradiko、そしてもう1つは音楽ストリーミングサービスSpotifyです。

radikoは40代~50代の男性がメインユーザーを構成しており、1ユニークユーザー(UU)当たりの聴取時間は130分前後と非常に長いのが特徴です。利用者の属性がパチンコのメインユーザーと類似していることから、既存パチンコユーザーへのアプローチに適していると考えられます。

Spotifyは全世界でのユーザー数が4億人、国内の1日平均利用時間は128分。利用者は35歳未満のスマホ世代が多いのが特徴となっています。利用者の属性は、情報伝達が難しいと言われる20代~30代が多いことから、新規ユーザーの開拓に強いと考えられます。

CFYでは実在するパチンコ店において音声広告の出稿と検証を実施してきました。その活用実例から見えてきたことは幾多もありますが、媒体特性が類似する動画広告と比較して大きく上回るポイントがあります。それは「完全聴取率」の高さです。CFYの分析データによると音声広告の完全聴取率は約96%であることが分かりました。これは、スキップできてしまう動画広告と異なり、ほとんどのユーザーへ広告を届けることができていることを意味しています。全般的に広告の伝達が難しくなってきている昨今、広告伝達という観点において音声広告は「類を見ない広告媒体」であると言えるでしょう。

では、パチンコ店においてはどのように活用できるのか? ということについて見てみましょう。活用実例の結果から見えてきたことを整理してみると、パチンコ店において音声広告は3つの利用価値があることが分かってきました。

①複数店舗への波及効果
②ブランド想起
③イニシアティブ


まず、①複数店舗への波及効果について。音声広告は歴史が浅いため配信母数は動画広告よりも少ないと認識する必要があります。ある程度のセグメントターゲティングは必要ですが、基本的に広くターゲティングすることを推奨しています。エリアに関しても「店舗周辺」に限定するよりは、「都道府県内全域」や「地方(地域)区分」で配信母数を多く確保する方がコンバージョンという観点からは適していると言えます。そのため、単独店舗よりも複数店舗での利用を前提とし、複数店舗への波及効果を生み出すための広告媒体として位置付けることを推奨します。

次に、②ブランド想起。音声広告は「不快に感じにくい」という強みがあります。しかしそれは、声や音楽にこだわったクリエイティブであることが前提となります。クリエイティブは、「新台入替」などの「期待感想起」よりも、「企業イメージ」や「アンバサダーによる応援」などの『ブランド想起』の方が適しています。

最後に、③イニシアティブ。パチンコ店における音声広告は、現在「導入期」にあります。これに限らず新しい領域や市場には、多くの場合イニシアティブというメリットがあります。心を打つクリエイティブを世に配信し、「あの音声広告、なんか面白いよね」という印象に残すことに成功すれば、ブランドへのエンゲージメントを高めることに期待できるでしょう。「成長期」に突入する前のブルーオーシャンであることが音声広告の3つ目の利用価値となります。


最後に、音声広告の効果測定について触れておきます。音声広告は前述の通り、ブランド想起のクリエイティブが推奨のため、コンバージョンはWebサイトへのアクセスとなります。音声広告を配信した結果、Webサイトへのアクセスがどのくらいあったか(どのくらい上がったか)を計測しましょう。詳しく分析をしたければ、「音声広告を聴いた人と聴いていない人では認知度がどのくらい違うか?(ブランドリフト調査)」、あるいは「音声広告を聴いた人がどのくらい来店したか?(来店計測)」といったように、より専門的な分析をすることも可能です。

これまでのパチンコ広告は「視覚」に訴求するものが多く飽和状態にありますが、「聴覚」に訴求するものは不足状態であると言えます。また、「聴覚」からの情報は「視覚」の2倍以上早く脳に伝わり、8倍以上の情報処理能力があると言われています。今こそ、完全聴取率の高い音声広告を活用して、ブランドへのエンゲージメントを高めてみましょう。

※『月刊アミューズメントジャパン』2023年4月号に掲載した記事を転載しました


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